アユの種苗生産では,一定期間を高水温で飼育すると,Tリンパ球の成熟器官である胸腺の発達が抑制されることが報告されている。このような種苗期における高水温飼育が細菌性冷水病に対するアユの抗病性を低下させることが推測される。そこで,本稿では,その基礎情報とするため,実際に行われているアユ種苗生産時の水温管理について各県にアンケート調査を行った。その結果,人工海水や天然海水を用いた仔稚魚期および淡水馴致後の中間育成期において,ボイラーやハウス内飼育等で水温を上昇させる県と,加温は最低限にとどめて自然水温で飼育する県があることがわかった。今後,種苗生産時の高水温飼育がアユの抗病性に及ぼす影響を明らかにするとともに,抗病性に注目した水温管理の見直しが必要であると考えられる。