魚病研究
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養殖カンパチで発生したヤセ症状を呈する症例
岩尾 豊 南 隆之桐生 郁也米加田 徹
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2025 年 60 巻 3 号 p. 161-165

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抄録

夏季にカンパチ養殖場において,魚体重約 80 gの群で累積死亡率約10%に達する死亡事例が発生した。臨床的にはヤセ症状と幽門垂の拡張が顕著に観察された。病理組織学的な観察では,胆管腔に粘液胞子虫が高頻度で観察され,顕著な肝炎が認められたほか,腸管にもコクシジウム様異物が観察された。病魚由来のRNAについてメタトランスクリプトーム解析を行ったところ,粘液胞子虫に分類される Sphaerospora属およびコクシジウム類の1種であるGoussia属に類似性を示す遺伝子配列が高頻度で検出された。今回の検査ではヤセ症状の要因を十分に説明することはできず,原因体の特定には至らなかったものの,これらの寄生体がヤセ症状の原因となった可能性が高いと考えられる。

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© 2025 日本魚病学会
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