抄録
1.人工生産マダイ,クロダイ稚魚に発生する,口吻部の白色ないし黄白色のびらんを主症状とする疾病について調査した。2.発病魚は,マダイ,クロダイとも全長15~60mmの範囲であり,特に20~40mmのものが多い。この範囲内では,大型の個体ほど口吻患部は発赤を伴う。3.患部には濃密な滑走細菌の集落が認められる。菌を分離して,性状,薬剤感受性,病原性について調べた結果,この菌は海水要求性があり,菌体を魚体に塗布することにより人工感染が成立し,自然発病魚と同一症状を呈した。4.この菌は,寒天,セルロース,キチンのいずれも分解しないことからFlexibacter sp.と判断された。