魚病研究
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ビブリオ病経口ワクチンワクチンによるアユの免疫機構の研究―I
体表における感染防御作用
川合 研児楠田 理一
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1981 年 16 巻 1 号 p. 1-8

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抄録
 1.アユのビブリオ病経口ワクチンの作用機構を検討するために,免疫魚と対照魚に対して3種類の方法で生菌攻撃を行なって,感染門戸を究明するとともに,体表粘液,腸粘液,および血清中の凝集素価について調査し,体表粘液中に検出された凝集素の役割について考察した。2.排菌法で攻撃した免疫魚と対照魚の各部位における菌の分布を比較したところ,免疫魚の体表部では菌の検出率が低く,両群間に有意差が認められた。3.菌浴法で攻撃した場合には菌は対照魚の皮膚のみで増殖し,腸,腸内容物,および免疫魚の皮膚では検出されなかった。4.筋肉内接種法で攻撃した場合には両群のLD50にはわずかの差異しか認められなかった。しかし,致死に至るまでの時間は免疫魚の方が長い傾向が認められた。5.凝集素価の上昇は免疫魚の体表粘液中だけに認められ,腸粘液や血清では対照魚と差異がなかった。6.免疫魚の体表粘液にはアユの体表に菌の付着を抑制する作用が認められた。7.以上のことから,本病の感染門戸の主体は皮膚であり,経口ワクチンの効果は体表粘液中に分泌される凝集素が皮膚に対する菌の付着を抑制する作用に基づくものであると推察された。
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© 日本魚病学会
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