抄録
特異抗体感作staphylococciを用いたcoagglutination testによる感染細胞培養液および病魚内臓抽出液中に存在するIPNウイルス抗原の検出法について,特に本法のIPN迅速診断への応用を目的に検討を行ない次の如き結果を得た。抗IPNV(Buhl)血清感作staphylococciはIPNV(Buhl)と反応陽性を, IHNVやOMVとは陰性を示し,この反応の特異性はブロッキングテストにより確かめられた。血清タイプの異なるIPNV株間での交叉凝集試験では,抗IPNV VR299血清感作staphylococciは北米および我国分離株(VR299 type)とのみ反応陽性を示し,Ab, Sp株を含むヨーロッパ株との反応は陰性であった。一方抗IPNV Ab, Sp血清感作staphylococciはVR299 type株と弱い交叉凝集反応を示したが,その凝集パターンはAb, Sp株のそれとは明らかに異なり,本法によりこれらの迅速・簡易血清型別が可能であった。ニジマス(Salmo gairdneri),ギンマス(Oncorhynchus kisutch)およびアマゴ(Oncorhynchus rhodurus)IPN病魚の内臓抽出液を抗原としたcoagglutination testでは,比較的高希釈(×24)試料においても90分間の反応で陽性結果を得,IPNの迅速な診断が可能となった。本法は特殊な実験器具を全く必要とせず,最終結果を得るまでにわずか2時間程を要するのみであることから,現場におけるIPNの迅速かつ簡易な診断法であると考える。