抄録
1981年から1985年にかけて, 奈良県および三重県下の養殖幼コイの間に, 眠り病症候群が発生した。その病魚の一部について, 病理組織学的検索の結果, Ichtyobodo necator の鰓寄生が認められた。本虫の寄生を受けた鰓には, 鰓薄板呼吸上皮の剥離・壊死, 鰓薄板の癒着, 鰓薄板間上皮の増生による鰓弁棍棒化がそれぞれ観察された。鰓弁の棍棒化の顕著な症例では肝細胞の混濁腫脹, 腎臓尿細管上皮の硝子滴変性が起っていた。また, 1%食塩水1時間浴で, 本症病魚の治療効果が認められた。