抄録
マダイの直腸に寄生する Longicollum pagrosomi の害作用を病理組織学的な面から検討した。直腸では粘膜上皮細胞が変性, 壊死などを示している局所が多く, 粘膜下織, 筋層には高度の細胞浸潤および定形的な寄生虫性肉芽腫がみられた。直腸全層にみられた壊死部には多数の細菌が認められた。寄生虫性肉芽腫による直腸の各筋層への圧迫, 走行の乱れ, 筋層の断裂・消失がみられた。本寄生虫は宿主の直腸全域にかなりの障害を与えていると判断した。なお, 直腸以外の臓器には本寄生虫によると思われる変化は認められなかった。