魚病研究
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海産魚の潰瘍病菌に対するテトラサイクリン系抗生物質の試験管内作用について
楠田 理一水野 尚樹
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1969 年 3 巻 2 号 p. 14-17

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抄録

 テトラサイクリン系抗生物質5種の試験管内作用をCPと比較してみると,V.anguillarum K-3に対する.発育阻止濃度はかなり劣り,CPの約4倍の濃度を必要とする。しかし,殺菌作用は逆にテトラサイクリン系抗生物質5種の作用が強く,CPの約5倍の殺菌力が認められる。また,テトラサイクリン系抗生物質5種のK-3株に対する耐性獲得の速さは,10代継代により原株の16~32倍であるのに対して,CPは8倍であるから高度の耐性を獲得するといえる。窪田はK-3株に対するテトラサイクリン系抗生物質とCPの10代継代後の耐性獲得率を調べ, CPが16倍であるのに対し,テトラサイクリン系抗生物質は8倍で,耐性獲得率が低いとして著者らの成績とかなり異なった結果を報告しているが,追試の結果からも,このような成績を得ることはできなかった。横田によれば一般的にはCPの耐性獲得速度は遅く,テトラサイクリン系抗生物質は耐性の生じやすい傾向を認めていることなどから,著者らの結果は妥当であると考える。以上,海産魚の潰瘍病菌に対するテトラサイクリン系抗生物質5種の試験管内作用を,抗生物質のなかで最も感受性の高いChloramphenicol(CP)と比較して検討した。その結果,試験管内においてはテトラサイクリン系抗生物質5種は,CPに比較して抗菌力および耐性獲得状態は劣るが,殺菌力は優れているので,海産魚の潰瘍病の防除薬剤として期待できると考える。

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