老年歯科医学
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原著
初診時における咬合崩壊予測に関する研究
―歯科診療所の経年データを用いたCox比例ハザードモデル―
平田 米里木下 直彦本間 美知子小磯 京子石上 和男瀧口 徹
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2018 年 33 巻 1 号 p. 3-16

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抄録

 1989年開始の8020運動が功を奏し,2016年には80歳以上の20歯保有者が5割を超えた。本目標の到達には,第一次予防のうち啓発活動主体のpopulation strategyのみでは限界があり,WHOが提唱するhigh risk strategyが必要である。しかるに,いまだ未導入の主要な原因に研究デザインに関する倫理上の理由が挙げられる。たとえば,歯科健診で高度の歯周疾患を有する早期の咬合崩壊のハイリスク者とされた場合,そのまま放置せずさまざまな予防処置や治療を行い,歯を喪失しない方向で比較対照群を設けず介入を行うであろう。このことはいわば「ハイリスク者という予測が当たらない方向で介入することと同義」であり,結果的に有効なハイリスク判定指標の開発を難しくしていると考えられる。本研究では,初診時に20歯以上の現在歯を保持している中高年の患者404名を対象に近未来の咬合崩壊の端緒をサロゲートエンドポイントとし,初診時の予測指標の同定を試みた。咬合崩壊の端緒を現在歯数と推定咬合歯数および咬合支持域の3条件の組み合わせで捉え,最長6年半にわたって追跡しCox比例ハザード分析を行った。その結果,有意のハイリスク項目は,①年齢蓄積性,②歯間ブラシなどの不適切使用,③歯周ポケット対策などの量と質,④禁煙指導や糖尿病管理など歯科医科連携,および⑤大臼歯数左右差などの評価未確定要因,に分類された。

 患者の咬合崩壊について,交絡因子を調整するためCox比例ハザードモデルなどを用いる分析法は有用であると考えられた。

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© 2018 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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