抄録
1) キンギョの腎腫大症罹病魚のM.cyprinii 初感染部位について,外観上病魚とは認められない初期あるいは軽症の病魚及びび外観上罹病が明らかな病魚を用いて調べた。 2) 外観上病魚とは認められない初期あるいは軽症の症魚95尾のうち, 74尾について初感染部位を知ることが出来た。74尾すべてに集合管に胞子虫の寄生と病変が認められ,43%は集合管に単独に病変がみられたが,細尿管に単独に病変をおこしているものはなかつた。 3) 外観上罹病が明らかな病魚268尾の場合は,すでに病変の進行著しく,初感染部位の判った魚は12尾にすぎなかつた。それらはすべて集合管または乳頭管であった。 4) 0年魚の病魚は6月から腎管に胞子虫と病変が観察されたが,リンパ様組織及びボーマン嚢にそれらが認められたのは12月以降であり,すべて腎管の上皮細胞列の乱れた部位からの侵入であった。従って,リンパ様組織とボーマン氏嚢は初感染部位ではない。 5) 腎腫大症の初感染部位は主として集合管であり,胞子虫の繁殖とともに細尿管へ侵入するものと判断される。