1) 1973年10月から11月にかけて津市と鈴鹿市の養鰻池で一種の粘液細菌(現在,種は未同定)による流行病が発生・流行した。病魚はいずれも鰓に粘液細菌の寄生がみられ,通常,鰓は肥厚している。重篤例では鰓弁の壊死または出血もみられた。 2) 病魚の鰓から分離した菌株の薬剤感受性試験を行なったところ,本菌は,抗生物質ではテトラサイクリン,オキシテトラサイクリン,クロルテトラサイクリン,アミノベンジルペニシリン,カナマイシンに,化学療法剤ではスルフイソゾール,ナリジクス酸,オキソリン酸に対して高い感受性を示した。逆性セッケン,ホルマリン,マラカイトグリーンおよび硫酸銅などの殺菌剤は本菌に対して殺菌力が低く,殺菌有効濃度はいずれも魚の致死量をはるかにうわまわっていた。 3) 現場で,水温30℃程度の温水に池全体のウナギを一定期間さらす加温療法と,加温に加えて有効抗生物質を経口投与する化学療法を試みた結果,いずれも優れた治療効果が得られた。 4) 現場での治療実験の結果から,流行初期の治療には加温療法が有効であり,流行最盛期では加温と有効薬剤の経口投与との併用が有効であることがわかった。
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