家族性腫瘍
Online ISSN : 2189-6674
Print ISSN : 1346-1052
症例報告
遺伝子変異を検出し得なかったHNPCC 家系の大腸・肺・十二指腸異時性5 重複癌の1 例
福永 睦冨田 尚裕山崎 恵司高塚 雄一今本 治彦大里 浩樹菅 和臣相原 智彦池永 雅一田村 和朗
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2001 年 1 巻 2 号 p. 66-70

詳細
抄録
HNPCC の診断基準を満たす大腸・肺・十二指腸の異時性5 重複癌を切除し得た1 例を報告する.症例は昭和13 年生まれの男性で,32 歳時上行結腸癌,53 歳時右肺腺癌,57 歳時下行結腸早期癌,58 歳時下行結腸進行癌,59 歳時十二指腸癌にて手術を受けた.家族歴では母,兄,弟に大腸癌を認め,2 世代にわたり4 人の大腸癌患者の集積を認めた.切除腫瘍組織のパラフィンブロックよりDNA を抽出し,5 種類のマーカーでマイクロサテライト不安定性について検索したところ陽性であり,また,免疫染色にてミスマッチ修復遺伝子の蛋白産生の有無を検討したところhMLH1 が陰性であった.しかし,hMLH1,hMSH2 遺伝子のsequencing では変異は検出されなかった.HNPCC の診断基準に合致しているにもかかわらずhMLH1,hMSH2 遺伝子の解析のみでは原因となる遺伝子変異が同定出来ない場合もあり注意を要するとともに,このような家系に対する効率的な遺伝子解析法の開発やサーベイランスの確立が望まれる.
著者関連情報
© 2001 The Japanese Society for Familial Tumors
前の記事 次の記事
feedback
Top