家族性腫瘍
Online ISSN : 2189-6674
Print ISSN : 1346-1052
1 巻, 2 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
総説
  • 山本 博幸, 伊東 文生, 福島 啓, 堀内 志奈, 佐々木 茂, 今井 浩三
    2001 年1 巻2 号 p. 43-47
    発行日: 2001年
    公開日: 2018/11/27
    ジャーナル オープンアクセス
    単純繰り返し配列における長さの変化に特徴づけられる新しい遺伝子不安定性,マイクロサテライト不安定性(MSI)は,HNPCC の大部分ならびに散発性腫瘍の一部においてみられる.近年の研究により,二つのタイプのMSI すなわち高頻度MSI(MSI-H)と低頻度MSI(MSI-L)があることがわかってきた.MSI-H 腫瘍と他の腫瘍では,臨床病理学的,分子学的特徴に大きな差異を認める.例えば,MSI-H 大腸癌は,p53,K-ras,APC 遺伝子の変異の頻度が低く,DCC 遺伝子の不活化やCOX-2 の過剰発現も少ない.一方,TGFβRII やBAX など標的遺伝子のフレームシフト変異やhMLH1 遺伝子を含む癌抑制遺伝子のメチル化の異常を高頻度に認める.MSI-H 膵管癌も,正常型K-ras 遺伝子や髄様癌などの特徴を有する.IGF II 遺伝子のLOI がMSI-H あるいはMSI-L 大腸癌患者の癌部および隣接非癌部において高頻度にみられることも明らかになった.生物学的,臨床的観点から,腫瘍のMSI を決定することは重要である.
  • 岩間 毅夫
    2001 年1 巻2 号 p. 48-50
    発行日: 2001年
    公開日: 2018/11/27
    ジャーナル オープンアクセス
    日常診療における,家族歴聴取の困難性を指摘した。家族性腫瘍を疑った場合に,正確で実用的な家族歴聴取の 工夫について述べた.
  • 亀山 香織, 高見 博
    2001 年1 巻2 号 p. 51-54
    発行日: 2001年
    公開日: 2018/11/27
    ジャーナル オープンアクセス
    多発性内分泌腫瘍症(multiple endocrine neoplasia, MEN) は,2腺以上の内分泌腺に特定の組み合わせで,同 時に,あるいは異時性に腫瘍が発生する疾患であり,その腫瘍の組み合わせでMEN 1 型と2 型に分類され,いずれも常染色体優性遺伝の遺伝形式をとる.MEN 1 型の原因遺伝子は11 番染色体長腕上に位置し,10 個のエクソンを含み610 個のアミノ酸からなる蛋白(menin)をコードしている癌抑制遺伝子である.一方,MEN 2 型は10 番染色体長腕上にあるRET proto-oncogene の点突然変異が原因である.MEN では発症を予防することは現時点ではできない. MEN 1RET 遺伝子の検査により保因者を早期に発見し,少しでも早く治療を開始することが大切である.
解説
  • 佐藤 恵子, 野口 眞三郎, 恒松 由記子
    2001 年1 巻2 号 p. 55-62
    発行日: 2001年
    公開日: 2018/11/27
    ジャーナル オープンアクセス
    遺伝性乳がんをモデルケースとして,遺伝子診断研究を実施する際に必要な,被検者への研究参加の依頼から結果の説明,家族への説明までの手順および説明の際に用いる説明文書・同意書を開発し,遺伝子診断の対象となった乳がん患者5 人による予備的な評価を得た.説明文書・同意書は,遺伝性乳がんの疑われる患者本人用,遺伝子診断の結果開示用,家族・親戚用の3 種を作成した.患者本人用の説明文書は,説明を行なう医師への注意,研究への協力依頼(3 ページ),内容の説明(6 ページ)の3 部で構成した.また,同意文書は,家族への情報開示や血液の他研究への利用についてそれぞれ諾否を得る書式とした.説明文書を読んだ患者は遺伝子診断への理解度が改善しており,説明文書が患者の遺伝子診断に対する理解を促進するのに有用であることが示された.
症例報告
  • 伊藤 康平, 野水 整, 山田 睦夫, 片方 直人, 渡辺 文明, 八巻 義雄, 福島 俊彦, 鈴木 眞一, 土屋 敦雄, 竹之下 誠一, ...
    2001 年1 巻2 号 p. 63-65
    発行日: 2001年
    公開日: 2018/11/27
    ジャーナル オープンアクセス
    家族性乳癌の家系内腫瘍スペクトラムでは,甲状腺癌は頻度の高い腫瘍である.また乳癌の重複癌からみても甲状腺癌は頻度の高いものである.われわれは乳癌と甲状腺癌の集積の著明な家系を経験したので報告する.これらの家系での遺伝子検索はほとんどなされていないが,BRCA 遺伝子関連家族性乳癌に甲状腺癌が発生したと考えられるような家系と,それとは全く別に乳癌と甲状腺癌の集積した家系が存在するように思われる.前者では甲状腺癌の発生にBRCA 遺伝子がどのように関連しているか明確にはなっていないし,後者では原因遺伝子の候補もまだ見つかっていない.しかし,癌家族歴を丹念に聴取することで癌集積家系を明らかにすることは,家族性癌の研究上重要なことと思われる.
  • 福永 睦, 冨田 尚裕, 山崎 恵司, 高塚 雄一, 今本 治彦, 大里 浩樹, 菅 和臣, 相原 智彦, 池永 雅一, 田村 和朗
    2001 年1 巻2 号 p. 66-70
    発行日: 2001年
    公開日: 2018/11/27
    ジャーナル オープンアクセス
    HNPCC の診断基準を満たす大腸・肺・十二指腸の異時性5 重複癌を切除し得た1 例を報告する.症例は昭和13 年生まれの男性で,32 歳時上行結腸癌,53 歳時右肺腺癌,57 歳時下行結腸早期癌,58 歳時下行結腸進行癌,59 歳時十二指腸癌にて手術を受けた.家族歴では母,兄,弟に大腸癌を認め,2 世代にわたり4 人の大腸癌患者の集積を認めた.切除腫瘍組織のパラフィンブロックよりDNA を抽出し,5 種類のマーカーでマイクロサテライト不安定性について検索したところ陽性であり,また,免疫染色にてミスマッチ修復遺伝子の蛋白産生の有無を検討したところhMLH1 が陰性であった.しかし,hMLH1,hMSH2 遺伝子のsequencing では変異は検出されなかった.HNPCC の診断基準に合致しているにもかかわらずhMLH1,hMSH2 遺伝子の解析のみでは原因となる遺伝子変異が同定出来ない場合もあり注意を要するとともに,このような家系に対する効率的な遺伝子解析法の開発やサーベイランスの確立が望まれる.
海外レポート
ガイドライン
  • 家族性腫瘍研究会 倫理委員会 ガイドライン作成ワーキンググループ
    2001 年1 巻2 号 p. 74-86
    発行日: 2001年
    公開日: 2018/11/27
    ジャーナル オープンアクセス
    これまでのガイドライン(案)のうち,基本原則部分のみ,「案」がとれた形で2000 年版が公開されました. 1.家族性腫瘍における遺伝子診断の研究とこれを応用した診療に関するガイドライン(2000 年版)−家族性腫瘍における遺伝子診断の研究とこれを応用した診療の実施にあたり配慮すべき基本原則−ガイドライン(案)のうち,基本原則以外の部分,現在「案」をとるための最終改訂作業中です。以下は,1999年12 月15 日付けの改訂第5 版のガイドライン(案)です. 2.ガイドライン(案)作成までの経緯 3.ガイドライン作成ワーキンググループの主なメンバーと所属および専門領域 4.前文 5.基本原則(この部分については,2000 年版が出たため省略してあります) 6.各論
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