抄録
米国ではBRCA1/2 の同定から20 年を経て,遺伝性乳がん卵巣がん(以下,HBOC)が一般診療の中に深く浸透している.一方,日本ではカウンセリング・遺伝子検査に保険適応がなくリスク低減手術はごく一部の施設でしか行われていない.HBOC 診療の普及を妨げているのは,乳癌診療に携わる医療者の知識不足から来る無関心が主因であると考えている.当院がある高知県は人口約73 万6 千人で急激に過疎が進み,人的資源の制限が大きい.その中で,既存の研究会・NPO 法人など乳癌診療に携わる医療者のネットワークを最大限に利用して啓発活動を繰り返し,県内の医療者の中でHBOC 診療普及への機運を高めると同時に,当院の乳腺外来を軸に乳癌診療部門が既存の遺伝診療部門と連係することで比較的円滑にHBOC 診療が導入することができた.当院でのHBOC 診療開始までの過程と県内の乳癌診療に関わる医療者に深く浸透した現状を紹介し,今後の課題について考察する.