抄録
遺伝子検査にてBRCA 遺伝子変異陽性と診断された卵巣・卵管がん10 症例の臨床的特徴を後方視的に検討した.診断時年齢の中央値は52 歳.卵巣がん発症前に遺伝子診断を行った症例は2 例で,サーベイランス中に発症した卵巣がんIIIc 期の1 例を含む.卵巣がん発症後に遺伝子診断を行った症例は8 症例で,卵巣がん発症を契機として遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)を疑い診断に至った症例を4 例認めた.腫瘍の組織型は漿液性腺癌が6 症例と最も多く,報告の少ない粘液性境界悪性腫瘍を2 例に認め,この2 例はいずれもBRCA2 遺伝子変異陽性であった.初回治療は10 例中9 例で腫瘍減量手術が行われ,7 例で完全切除となった.また5 例に再発を認めたが,再発腫瘍摘出および化学療法にて全例が生存(18〜164 カ月)しており,過去の報告のとおりBRCA 遺伝子変異陽性者の卵巣・卵管がんの短期予後は比較的良好と考えられるものの長期予後に関しては検討が必要である.