抄録
分野横断的な排出削減・影響評価を行うため,国際的に共通社会経済シナリオ(Shared Socioeconomic Pathways, SSP)が開発されている.SSPは気候変化に対する緩和策と適応策への困難性を軸に描かれた 5つのシナリオである.このうち3つのSSPについて,定性的な社会像に整合する飢餓リスクに関する将来シナリオを定量化し,飢餓リスクに影響をもたらす因子を明らかにした.この結果,1)将来の飢餓リスクは,将来の社会状況により大きく異なること,2)SSP間で飢餓リスクに大きな違いをもたらす因子は,人口,食料分配の公平性,平均一人一日当たりの食料消費であること,3)食料分配の公平性は,長期的な飢餓リスク評価において,飢餓リスクを左右する重要な因子の一つであることが明らかとなった.