抄録
目的:家族性大腸腺腫症(FAP)に対する結腸全摘回腸直腸吻合術(IRA)の長期的な術後成績から,本術式の長期管理と問題点ついて検討を加えた.
対象: 1970 年から1990 年までのFAP 初回手術例は42 例であった.このうち直腸病変が非密生型であること,下部直腸に癌の合併がないこと,術後定期的追跡調査ができることを前提にIRA を29 例に施行した.
結果: IRA 初回手術29 例の性別は男性16 例,女性13 例で,平均年齢は28.9 歳.平均19.7 年の術後観察期間において,残存直腸からの発癌が8 例(27.6 %)で認められた.その内訳は,男性3 例,女性5 例であり,初回手術時の平均年齢は30.3 歳であった.初回手術から残存直腸発癌までの平均期間は15.0 年(1.3 〜30 年)であり,1 年に1 〜2 回の定期的検査を継続していたが,5 例がmp 以深の進行癌であり,2 例は残存直腸の発癌のため死の転帰をとった.
結語: IRA 術後の一生涯にわたる残存直腸の長期管理の維持・継続は難しく,早期の段階での発見も困難である.FAP に対する予防的手術の術式としては,原則としてIAA もしくはIACA を選択すべきことが確認できた.