抄録
家族性大腸腺腫症(FAP)は,がん化する可能性が極めて高い遺伝性疾患であり,時に甲状腺乳頭癌を発症し,篩状型乳頭癌(cribriform morular variant of papillary thyroid carcinoma ; CMVPTC)を呈することがある.今回は子の若年者CMVPTC を契機に発見されたFAP 患者の事例をもとに,遺伝カウンセリングのプロセスを通して,患者がたどった経過や抱えていた問題を帰納的に分析することで,チームアプローチによる遺伝カウンセリングの重要性が明らかになった.家族性であるがゆえに複雑に絡みあう患者の問題に対し,遺伝外来担当医と看護職によるカウンセラーの協働的支援体制のアプローチは,遺伝子診断の意思決定から,その後の予防・早期発見にむけての身体的・精神的支援体制が整うことは,患者の今後のQOL 維持に大きく貢献すると考えられる.