抄録
桂枝茯苓丸の糖尿病性腎症に対する作用を,2種類のモデルラット(腎摘+STZ,自然発症糖尿病 WBN/Kob ラット)を用い検討した。いずれのモデルにおいても桂枝茯苓丸投与により,腎機能(尿蛋白排泄量)と病理所見の改善作用が認められ,桂枝茯苓丸が糖尿病性腎症の発症・進展を遅延することが実験的に明らかとなった。一方,慢性的な高血糖状態では酸化ストレス,ポリオール経路,糖化反応の亢進をひき起こし,腎症の進展に関与しているが,これら指標の脂質過酸化,ソルビトール,advanced glycation endproducts(AGEs)を測定した結果,桂枝茯苓丸は脂質過酸化とAGEsに好影響を及ぼしていた。さらに,桂枝茯苓丸の作用を,aminoguanidine(AGEs 阻害薬),butylated hydroxytoluene(抗酸化剤),captopril(ACE阻害剤)と比較検討した結果,脂質過酸化とAGEsに対する抑制作用が認められた。また,桂枝茯苓丸の腎保護作用はcaptoprilよりは弱く,aminoguanidine と同程度であった。これらの結果より,桂枝茯苓丸による糖尿病性腎症治療の可能性が示唆された。