家族性腫瘍
Online ISSN : 2189-6674
Print ISSN : 1346-1052
総説
家族性大腸腺腫症症例に合併する胃病変と胃発癌機序
竹田 明彦 伴 慎一田淵 悟合川 公康篠塚 望小山 勇
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2007 年 7 巻 1 号 p. 30-35

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抄録
家族性大腸腺腫症(FAP)における胃病変の合併は比較的高頻度で,多くの家系に出現する.FAP に合併する胃病変には胃底腺ポリープ,腺腫,癌がある.胃底腺ポリープは病理学的に過誤腫に分類され,最も高頻度に発生する胃病変である.最近,長期観察中にポリープの一部が異形成を起こして胃発癌を誘発したと考えられる報告がなされた.腺腫の発生は幽門前庭部に集中し,より若年層から発症ししかも多発傾向が強い.肉眼形態や組織像は通常の胃腺腫と変わりなく,腺腫の癌化についても特有の現象ではない.胃癌の合併率は約5 %程度との報告が多い.前庭部を中心に早期癌から高度進行癌まで組織型,深達度ともにさまざまであるが,明確な発癌機序は不明である.今回明らかなFAP 家族歴を有する51 歳女性の多発肝転移を伴う高度進行胃癌症例を経験した.胃癌の発生部位は周囲に全くポリープや腺腫を認めない胃体上部で,癌周囲の正常胃粘膜内に異型細胞領域が散在性に存在し,p53 およびcytokeratin7 の発現が二重染色にて確認された.以上より胃癌発生のメカニズムとして正常胃粘膜内に巣状に出現した異型細胞領域において,p53 およびcytokeratin 7 の発現を介した発癌機転が推察された.
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© 2007 The Japanese Society for Familial Tumors
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