抄録
多発性内分泌腺腫症2 型(MEN 2A,2B)および家族性甲状腺髄様癌(FMTC)の原因遺伝子はRET 遺伝子である.そこで,当院で甲状腺手術を実施した遺伝性髄様癌患者および血縁者44 例と散発性髄様癌患者54 例,計98 例を対象に,RET 遺伝子検査結果,臨床症状,治療成績を検討した.直接塩基配列決定法により,RET 遺伝子変異のhotspot が存在するexon 10,11,13 〜16 を検索した結果,臨床的に家族性と思われた症例16 例,および一見散発性と思われた症例61 例中7 例(11 %),計23 例にRET 遺伝子変異を認めた.遺伝性症例では,若年で髄様癌が発症する傾向があり,甲状腺内に多発する傾向が認められた.臨床的に散発性と思われる症例でもRET遺伝子変異を有し,遺伝性と判明する症例もあるため,甲状腺髄様癌全例を対象にRET 遺伝子検査を実施すべきである.また,一見散発性の場合,特にexon 13 〜15 に変異を認める場合もあるので,検索すべきexon としてはexon 10,11,13 〜16 すべてである.