家族性腫瘍
Online ISSN : 2189-6674
Print ISSN : 1346-1052
総説
QOL 研究におけるresponse shift
伊藤 直美
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ジャーナル オープンアクセス

2008 年 8 巻 2 号 p. 49-54

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抄録
昨今,がんを始めとする慢性疾患の治療やケアのアウトカムとして,quality of life(QOL)といった主観的指標の重要性が指摘され,これが用いられるようになってきている.家族性腫瘍分野の研究においてもQOL の概念は重要であろうと推察する.QOL 研究は個人の主観を扱う領域である.各個人のものの捉え方というものは,時間やイベントによって変化しうるものである.そこで,QOL 研究の縦断デザイン・結果解釈において,このような変化をどのように考慮するかが非常に重要なとなる.これについて,response shift という概念を用いて説明されることがある.この概念は,QOL 研究を行う際,重要な考え方の一つと考える.この概念を手法としていかにとりいれるか,どう解釈をするか,といった点について現時点では明確な結論をみていない面もあるが,今後,さらなる議論の発展が望まれている.そこで,本稿では,そのような現状の紹介という視点にたち,定義,経緯,枠組み,測定法など,responseshift に関する基本的事項について,代表的著書・論文をまじえて整理した.特に,response shift の測定法の一つであるthen test については,詳しく説明した.代表的論文,meta-analysis も含めて先行研究を紹介した.最後に,今後の課題についても触れた.
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© 2008 The Japanese Society for Familial Tumors
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