抄録
ウンシュウミカン園において,枯死ナギナタガヤ由来窒素のミカン樹および再発生ナギナタガヤによる吸収特性を明らかにするため,圃場条件下とポット条件下で15N標識ナギナタガヤを施用し,1年間の追跡調査を行った.
5月下旬に枯死したナギナタガヤ由来窒素は,8月頃からミカン樹に吸収され始め,当年のミカン樹各器官や翌年の春季新生器官に移行した.同様に,再発生したナギナタガヤにも吸収され,1年後のミカン樹と再発生ナギナタガヤによる枯死ナギナタガヤ由来窒素の吸収量はほぼ同量であった.また,ミカン樹各器官の15N寄与率は春季新生器官や旧葉・細根で高く,収穫果では低かった.再発生したナギナタガヤの15N寄与率は樹体に比べて著しく高く,かつ地下部の方が地上部より高率であった.枯死ナギナタガヤ由来窒素の利用率は,樹体5.5%,ナギナタガヤ5.4%であり,施用から再発生したナギナタガヤが枯死するまでの間に,約11%の窒素が利用されることが明らかになった.