農作業研究
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研究論文
ヘアリーベッチとトウモロコシの輪作による窒素収支の改善
モハマド ザリフ シャリフィ松村 昭治伊藤 正浩平澤 正小松崎 将一
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2011 年 46 巻 4 号 p. 167-177

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抄録
窒素肥料を使用せずにトウモロコシ生産を行う栽培体系の確立を目的として,ヘアリーベッチ(HV)との輪作を検討した.
 試験区として「HVすき込み区」,「HVマルチ区」,「施肥区」および「対照区(無処理)」を設けた.2007∼2009の3年間,秋冬期にHVを栽培し,これを5月上旬に畑地に還元して飼料用トウモロコシを栽培し,HVによる窒素供給量およびトウモロコシの乾物生産量·窒素吸収量を調べた.その結果,以下のことが明らかになった.
 1)冬期にヘアリーベッチを栽培することにより,260∼300 kg ha-1の窒素を土壌に供給することができた.後作トウモロコシには130∼150 kg N ha-1の無機態窒素を供給できると推測された.
 2)開始後2∼3年目には明らかに両HV栽培区でトウモロコシの乾物生産量が高くなり,施肥区に匹敵した.乾物生産量が25 Mg ha-1に達したときの窒素吸収量は330∼400 kg N ha-1であり,この収量レベルにおいてHVにより最大で40%をまかなえると試算された.
 3) HV栽培区と対照区におけるトウモロコシの窒素吸収量の差は1年目は20∼25 kg ha-1であったが,2年目には100∼140 kg ha-1,3年目には40∼50 kg ha-1となり,変動はあるもののHVが重要な窒素源となりうることが確認された.
 4)「すき込み」と「マルチ」とでトウモロコシ収量に差は認められなかった.
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© 2011 日本農作業学会
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