農作業研究
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研究論文
アフガニスタン・バーミヤンにおける1990 年から2015 年の土地被覆変化
―土壌劣化と土地管理の不足―
Abdul Aziz MohibbiHasi Bagan稲冨 素子木下 嗣基
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2018 年 53 巻 1 号 p. 15-32

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抄録

土地管理の不足と紛争は,アフガニスタンのバーミヤンの生態系に大きなストレスを与えた.本研究では,1990 年から2015 年までのバーミヤンの土地被覆の時空間的変化と土地管理の問題を評価した.そのために,97 人の住民を対象にアンケート調査を行うとともに,現場調査を実施した.住民へのアンケートの結果,88 人が土地被覆が30 年で変わったと述べた.回答者らは,人口増加,資源の過度使用,過放牧,薪炭材収穫,干ばつおよび管理の理由を指摘した.政府組織やNGO とのインタビューの結果,植生の覆土の除去,過放牧,自然資源への依存,飼料収集,急な斜面での栽培が原因で,土地の劣化が発生しているとの結果を得た.また,1990 年から2015 年のランドサット画像を用いて土地被覆マップを作成した.放牧地は裸地と居住地の急速な増加に伴って60.2%から37.9%に減少した.このことは,人為的な影響が周囲の生態系に影響を与えたことを示唆している. 0.81 km2 のグリッドにおける土地被覆変化の統計的比較では,放牧地の減少が裸地のそれと強く負の相関があることを示した.また,バーミヤン市周辺では,居住地の拡大は農耕地の拡大と強く正の相関がある一方,裸地の増加とは負の相関が見られた.これらにより,長期の紛争,土地管理の不足,および社会経済的変化が土地被覆に影響を与えたことを示した.

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© 2018 日本農作業学会
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