農作業研究
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53 巻, 1 号
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総説
  • 辻 博之
    2018 年 53 巻 1 号 p. 3-13
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/20
    ジャーナル フリー
    北海道の畑作地帯ではコムギ,バレイショ,テンサイ,マメ類の4 品目による輪作を基本に,野菜類を含めた輪作体系が行われている.農家戸数の減少に伴い,1 戸あたりの経営耕地面積が増加するなかで,作業競合の回避や労働時間を削減する技術を導入して輪作の維持を可能にすることは,北海道畑作の農作業の大きな課題である.そこで,本報では,まず,畑輪作における作業競合の現状,主要作物の作業の概要と,輪作上の課題に対応した技術開発の状況を概説する.次に,高性能収穫機等の機械利用,自動操舵,精密農業等の普及が進みつつある技術や開発中の技術,それらを用いた作業支援等に関する取り組み状況を解説し,最後に,北海道の畑作における農作業の今後の課題について述べることとする.
研究論文
  • ―土壌劣化と土地管理の不足―
    Abdul Aziz Mohibbi, Hasi Bagan, 稲冨 素子, 木下 嗣基
    2018 年 53 巻 1 号 p. 15-32
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/20
    ジャーナル フリー
    土地管理の不足と紛争は,アフガニスタンのバーミヤンの生態系に大きなストレスを与えた.本研究では,1990 年から2015 年までのバーミヤンの土地被覆の時空間的変化と土地管理の問題を評価した.そのために,97 人の住民を対象にアンケート調査を行うとともに,現場調査を実施した.住民へのアンケートの結果,88 人が土地被覆が30 年で変わったと述べた.回答者らは,人口増加,資源の過度使用,過放牧,薪炭材収穫,干ばつおよび管理の理由を指摘した.政府組織やNGO とのインタビューの結果,植生の覆土の除去,過放牧,自然資源への依存,飼料収集,急な斜面での栽培が原因で,土地の劣化が発生しているとの結果を得た.また,1990 年から2015 年のランドサット画像を用いて土地被覆マップを作成した.放牧地は裸地と居住地の急速な増加に伴って60.2%から37.9%に減少した.このことは,人為的な影響が周囲の生態系に影響を与えたことを示唆している. 0.81 km2 のグリッドにおける土地被覆変化の統計的比較では,放牧地の減少が裸地のそれと強く負の相関があることを示した.また,バーミヤン市周辺では,居住地の拡大は農耕地の拡大と強く正の相関がある一方,裸地の増加とは負の相関が見られた.これらにより,長期の紛争,土地管理の不足,および社会経済的変化が土地被覆に影響を与えたことを示した.
研究報文
  • 鈴木 崇之, 鎌田 えりか, 石井 孝典, 安達 克樹, 新美 洋
    2018 年 53 巻 1 号 p. 33-41
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/20
    ジャーナル フリー
    日本の加工用ホウレンソウ栽培では,機械収穫が導入されつつある.そこで,日本で最大の産地である宮崎県内において,再生草を利用する刈取再生栽培法における,品種および栽培条件(1番草収穫後の追肥および1 番草収穫時期)が収量および外観品質に及ぼす影響について検討した.収穫時の地上部全重については,品種間に有意な差は認められなかったが,‘サプライズ7’に比べ,立性の‘クロノス’では,地上部全重に対する収穫葉重の割合が1 番草,追肥を行った場合の2 番草(再生草)とも高かった.‘クロノス’の栽培では,1 番草収穫後の追肥により2 番草の収穫葉重は大きくなり,正品率は高くなった.また,生育期間が長いほど,2 番草の収穫葉重は大きくなった.従って,刈取再生栽培を導入した機械収穫体系では,立性の品種を栽培し,1 番草は草丈40 cm 程度に達したら速やかに収穫して2 番草の生育期間を確保し,1 番草収穫後に追肥を行うことが望ましい.
  • 岩崎 明, 小松﨑 将一
    2018 年 53 巻 1 号 p. 43-52
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/20
    ジャーナル フリー
    夏作カバークロップとしてイネ科やマメ科の作物が単独に用いられる場面が多いが,これらの混作による効果はほとんど検討されていない.本研究は茨城大学農学部附属フィールドサイエンス教育研究センター内圃場において,夏作カバークロップの混作を行いバイオマス生産と窒素溶脱への効果の比較を行った.試験区はギニアグラス(Panicum maximum Jacq. 品種:ナツカゼ)とクロタラリア・スペクタビリス(Crotalaria spectabilis Roth. 品種:ネマクリーン)をそれぞれの慣行の播種量を100 として,ギニアグラス:クロタラリアの比率を変え設計を行った.処理区は「100:0(ギニアグラス単作区)」・「75:25」・「50:50」・「25:75」・「0:100(クロタラリア単作区)」・「0:0(裸地区)」の6 処理を3 反復とし乱塊法により設置した.2016 年はカバークロップの地上部バイオマスやC / N 比,地上部炭素含有量はギニアグラス単作区で最も高くなり,混作ではやや低下した.2017 年ではカバークロップの地上部バイオマスはギニアグラス単作区と混作区の75:25 区は同等でありC / N 比は単作区より混作で低下することが認められた.また土壌硝酸態窒素濃度において,両年ともにカバークロップの作付により有意な減少が認められた.2年間の結果から,夏作カバークロップの混作により単作に比べて同等の圃場に還元できるバイオマス生産量を確保し,かつC / N 比を低減させて,良質な有機物供給が可能であることが明らかとなった.
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