抄録
北海道では牛との接触による負傷事故が年間700件以上も報告されているが,府県では負傷事故調査を行っている自治体が限られていることもあり,問題が顕在化していない.そこで筆者らは9道県40戸の酪農家に聞き取り調査を実施した.その結果,府県でも北海道と同様,繋ぎ飼いでは搾乳時,放し飼いでは牛の移動時に事故が多く,長期入院した事例もある反面,労働力に余裕がないため余程のことでない限り入通院しない実態が明らかになった.事故の要因を分析した結果,繋ぎ飼いでの搾乳中の事故では,牛舎環境や牛の扱い方の改善による牛へのストレス軽減で,牛の危険行動を抑制すると同時に乳量増加や疾病の低減効果が期待でき,放し飼いでの牛の移動中の事故では,施設の改善により人と牛を分離することで事故の低減が期待できること等が示唆された.