農作業研究
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研究報文
知的障害者が自立的に作業に従事するための素工程分解農法
-知的障害特別支援学校における授業実践を通して-
佐竹 寛之林 孝洋
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2020 年 55 巻 4 号 p. 203-210

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抄録

知的障害者が農業に従事する際の課題として,任せられる仕事が限られることが挙げられる.その理由としては,慣行農法では知的障害者の作業内容への理解が難しいこと,理解不足や不器用さから作業精度が低いことなどが考えられる.本研究では,知的障害者が自立して作業を行えるように,作業工程を1動作まで細かく分解し(以下,素工程分解),その有効性を検討した.実験と調査は特別支援学校高等部の生徒20名を対象に調査を行った.素工程分解農法の有効性を検証するために(1)発芽数を比較する実験と,(2)大和マナの栽培における収穫物の比較調査と,各素工程における生徒の作業様態の記述調査を行った.その結果,素工程分解した栽培法では慣行農法に比べ発芽数が0.1%水準で有意に多くなった.収穫物の草丈は同程度のものを栽培することができた.記述調査の分析では,①素工程分解と補助具の利用を組み合わせて実施することで,生徒が作業の順序が理解しやすくなる,②任せられる作業範囲が広がる,③これまでの経験などによって適材適所に振り分けやすくなる,などの示唆が得られた.以上のように,素工程分解することは知的障害のある生徒がより自立的に作業を行うために有効であることが示された.

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