農作業研究
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研究論文
窒素追肥の施用時期の違いがコムギの倒伏抵抗性と収量に及ぼす影響
松山 宏美大川 泰一郎
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2021 年 56 巻 1 号 p. 17-27

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抄録

窒素追肥の施用時期がコムギの稈強度を考慮した倒伏抵抗性と収量に及ぼす影響を明らかにするために,日本めん用コムギ品種「あやひかり」と「イワイノダイチ」を用いた圃場栽培試験を行った.Zadoksの成長スケールにおけるGS30(茎基部から幼穂までが1 cm以上になった時期),GS32(第2節を視認できるようになった時期),GS39(止葉展開期)の3時期のうちいずれかの時期に,追肥窒素80 kg/haを1回施用する区と,無追肥区の計4処理区を設けた.GS30の追肥では最高茎数が増加し,GS32の追肥では有効茎歩合が向上して,両時期とも穂数が有意に増加した.また,GS30およびGS32の追肥により,1小穂粒数が有意に増加し,1穂粒数も増加した.GS39の追肥により,登熟後期の止葉のSPAD値が高く維持される傾向が見られたが,千粒重の有意な増大は見られなかった.また,地上部モーメントはいずれの時期の追肥によってもやや増大し,GS30およびGS32の追肥では葉鞘付き稈基部の挫折時モーメントがわずかに低下し,倒伏指数が有意に高まった.従って,GS30~GS32の追肥はコムギの収量を増大させる一方で,稈の強度を低下させて倒伏抵抗性を低下させると示された.

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© 2021 日本農作業学会
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