2021 年 56 巻 1 号 p. 29-38
イチゴうどんこ病に対するステロール脱メチル化阻害殺菌剤(DMI剤)の過剰使用はDMI材耐性菌出現の原因となっている.本研究では,DMI剤耐性菌が優占する四季成り性イチゴの生産圃場において,牽引式温湯散布装置による温湯散布がうどんこ病感染防止に及ぼす効果を調査した.四季成り性品種「なつあかり」に対し54℃±1℃で20秒間,温湯を噴霧したところ,うどんこ病に対する全身抵抗性の誘導条件である葉温50℃,10秒の目標温度が達成された.農薬と温湯散布を組み合わせた場合,2018年2月の栽培終了まで発病度は農薬散布のみの場合より小さかった.しかし既に感染した葉での治療効果は認められなかった.DMI剤耐性菌の出現は,初期は0%であったが,2016年9月,11月にはそれぞれ62, 100%に達し栽培終了まで継続した.一方で農薬のみでは発病度は2017年8月から2018年2月まで上昇したが,温湯散布も行った場合,発病は極めて少なかった.これらのことから,温湯散布はイチゴにDMI剤耐性菌を含むうどんこ病に対する抵抗性を誘導したものと考えられた.温湯散布は四季成り性イチゴの長期栽培においてDMI剤耐性菌を防除する効果的な手法となりうる.