本研究は,日本のブドウ園農家における年齢,身長,ブドウ棚の高さ(TH)と上肢の筋骨格症状(MSS)との関連を調査し,MSSの改善とアグリロボットスーツのようなウェアラブルサポートの製造に関する基本資料を得る目的で行った.151のブドウ園農家に対して,年齢,身長,THを含む作業負荷,MSSなどに関するアンケートによる調査を行った.ロジスティック回帰,線形回帰および相関分析を使用して,MSSと年齢,身長および肩,背中上部,背中下部のTHとの関連を解析した.その結果,背中上部,肩,背中下部のさまざまな重大なリスク因子が認められた.高齢,THが高く,身長とブドウ棚との高さの差(HD)が小さいと,それぞれ肩,背中上部,背中下部のMSSのリスクが大幅に増加した. MSSは下肢より上肢で高かった.これらのリスク因子は,体の部位によって異なった.ロボットスーツの購入を希望する農家(58%)は,全身(42%),上半身(46%),下半身(12%)のサポートが必要であると回答した.
窒素追肥の施用時期がコムギの稈強度を考慮した倒伏抵抗性と収量に及ぼす影響を明らかにするために,日本めん用コムギ品種「あやひかり」と「イワイノダイチ」を用いた圃場栽培試験を行った.Zadoksの成長スケールにおけるGS30(茎基部から幼穂までが1 cm以上になった時期),GS32(第2節を視認できるようになった時期),GS39(止葉展開期)の3時期のうちいずれかの時期に,追肥窒素80 kg/haを1回施用する区と,無追肥区の計4処理区を設けた.GS30の追肥では最高茎数が増加し,GS32の追肥では有効茎歩合が向上して,両時期とも穂数が有意に増加した.また,GS30およびGS32の追肥により,1小穂粒数が有意に増加し,1穂粒数も増加した.GS39の追肥により,登熟後期の止葉のSPAD値が高く維持される傾向が見られたが,千粒重の有意な増大は見られなかった.また,地上部モーメントはいずれの時期の追肥によってもやや増大し,GS30およびGS32の追肥では葉鞘付き稈基部の挫折時モーメントがわずかに低下し,倒伏指数が有意に高まった.従って,GS30~GS32の追肥はコムギの収量を増大させる一方で,稈の強度を低下させて倒伏抵抗性を低下させると示された.
イチゴうどんこ病に対するステロール脱メチル化阻害殺菌剤(DMI剤)の過剰使用はDMI材耐性菌出現の原因となっている.本研究では,DMI剤耐性菌が優占する四季成り性イチゴの生産圃場において,牽引式温湯散布装置による温湯散布がうどんこ病感染防止に及ぼす効果を調査した.四季成り性品種「なつあかり」に対し54℃±1℃で20秒間,温湯を噴霧したところ,うどんこ病に対する全身抵抗性の誘導条件である葉温50℃,10秒の目標温度が達成された.農薬と温湯散布を組み合わせた場合,2018年2月の栽培終了まで発病度は農薬散布のみの場合より小さかった.しかし既に感染した葉での治療効果は認められなかった.DMI剤耐性菌の出現は,初期は0%であったが,2016年9月,11月にはそれぞれ62, 100%に達し栽培終了まで継続した.一方で農薬のみでは発病度は2017年8月から2018年2月まで上昇したが,温湯散布も行った場合,発病は極めて少なかった.これらのことから,温湯散布はイチゴにDMI剤耐性菌を含むうどんこ病に対する抵抗性を誘導したものと考えられた.温湯散布は四季成り性イチゴの長期栽培においてDMI剤耐性菌を防除する効果的な手法となりうる.
前報において,150 mm幅で2列交互の千鳥状に植付け,植付け直後にロータリヒラーで1500 mm幅毎に2条4列分をまとめて培土する千鳥植え栽培では,750 mm幅で1条1列ごとに培土する方法よりも60 g以上の規格内収量が高まることを明らかにした.しかし,前報で開発した千鳥植え栽培の植付けと培土を別々に行う作業体系では,種子がロータリ爪に接触するなどして地表面に近づき,慣行法よりも生産した塊茎が緑化しやすい課題が残った.そこで本報では,前報で開発した千鳥植えポテトプランタを植付けと同時に750 mm幅で1条2列ごとに培土も行う方法に改良し,2016年と2017年に品質への影響を慣行法や前報で開発した千鳥植え栽培と比較した.試験の結果,緑化率は,前報で開発した千鳥植え栽培では2016年に慣行法よりも有意に増加したが,千鳥植えと同時の培土では播種に沿って培土され,2016年,2017年ともに慣行法と有意差がなかった.また,千鳥植え栽培による塊茎の一個重は,培土方法を問わず,2016年には慣行法に比べて有意に大きくなり,規格内収量は慣行法を有意に上回った.しかし,2017年にはどちらの千鳥植え栽培も慣行法と一個重は変わらず,規格内収量も差がなかった.