抄録
全部床義歯装着者の咀嚼機能を明らかにすることを目的に, 咬合力と咬合接触面積および調査票を用いた主観的咀嚼能力と義歯使用状況を調査した。
調査は医療法人社団S病院および社会福祉法人S会が運営する福祉施設群において, 上下無歯顎者 (男性35名, 女性90名, 平均年齢84.7±8.1歳) を対象に行った。そして, 義歯使用状況, 咀嚼についての評価, 義歯への総合評価, Dental Prescaleで測定した咬合力と咬合接触面積, および30品目から構成される調査票を用いた咀嚼能力について調査した。
その結果, ほとんどの人が義歯を使用し, また義歯使用年数は平均約10.7年と長く, 咀嚼についての評価と義歯への総合評価は比較的高かった。咬合力の平均は127.8±95.9N, 咬合接触面積の平均は3.7±3 mm2と小さく, 義歯の長期使用による咬耗の影響が示唆された。また, 咀嚼についての評価および義歯への総合評価との関連性はみられなかった。調査票による咀嚼能力では, かめる食品数の平均は21品目と比較的高く, さらに, 咀嚼についての評価および義歯への総合評価が高いほど有意にかめる食品数が増え, その関連性が明らかになった。