老年歯科医学
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調査報告
歯科口腔外科を有する病院併設の介護老人保健施設入所者に対する歯科治療の実態調査
鶴巻 浩勝見 祐二黒川 亮
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2011 年 26 巻 3 号 p. 362-368

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抄録

歯科口腔外科を有する病院併設の施設入所者に対する歯科治療について実態調査を行い, 今後の適切な治療提供体制や方向性について検討を行った。対象は2007年1月から2009年12月までの3年間に新潟中央病院歯科口腔外科を初診した病院併設の介護老人保健施設入所者63名 (男性19名, 女性44名)。受診者の平均年齢は83.2歳で, 男性が75.6歳, 女性が86.4歳であった。期間中新規入所者の受診率は58.0%と半数以上を占めていた。全身疾患については, 高血圧症や心疾患などの循環器疾患が57.1%と過半数にみられており, 次いで脳血管疾患が42.9%にみられた。なお, 抗血栓薬を内服している患者は34.9%であった。受診理由は義歯不適合が圧倒的に多く, その他, 義歯破損, 義歯紛失など義歯に関連するものが多くを占めていた。治療内容については, 義歯の修理ないし調整処置を要した患者は81.0%で, 義歯新製に関しても55.6%に行われていた。歯冠修復は31.7%, 歯冠補綴, 根管治療はともに20.6%に行われていた。歯周治療は50.8%に行われたが, 有歯顎者についてみると約8割の患者で行われていた。抜歯は63.5%に行われていた。認知症等により意志の疎通が十分ではない場合でも, 治療に対してある程度の協力性が得られる傾向がみられた。治療途中で中断となった患者は20.6%であった。入所期間の長期化等の社会情勢を鑑みれば, 今後, 施設入所の要介護者に対しても予後を考慮した歯科治療の提供を心がける必要性が高まるであろう。

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© 2011 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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