抄録
関節リウマチ(RA)は,長期にわたる薬物療法が行われ,歯科治療時にはその副作用や併発疾患に注意が必要である。今回,長期口腔管理を行った1症例について,口腔所見および日常生活動作(ADL),生活意欲の経年的変化について評価したので報告する。35 歳の時に RA を発症し,56 歳で当科を受診した。初診時の口腔所見として開口障害があり,う蝕等のため要処置歯 11 本を認め,喪失歯は 2 本であった。頻回の通院が困難なため入院下集中治療にて処置および口腔衛生指導を行った。その後,歯科治療は必要に応じて行い,口腔衛生指導・管理は,患者および介助者の負担と口腔衛生状態から判断し,半年に 1 度,継続的に行った。関節の可動域を考慮して歯磨きの持ち方等を工夫し,自立磨き支援を行うことで,口腔清掃状態の改善を図った。75 歳現在,日常の口腔清掃は自立して行われ,下顎の義歯使用は困難なものの,喪失歯は 7 本であり,疾患背景を加味して考えるとある程度良好に保たれていると考えられた。初診時より移動に関する動作は低下していたが,整容,コミュニケーションに関連する ADL と生活意欲は高く維持された。長期経過した RA 患者は,薬剤の副作用等による併発疾患の状態を把握しながら,定期的な口腔管理を継続することが重要であると考えられた。このような長期にわたる管理は口腔のみならず全身機能の維持につながる可能性が示唆された。