老年歯科医学
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臨床報告
高齢者の歯科口腔外科術前検査における心エコー検査の結果,有効性について
北川 栄二
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2012 年 27 巻 2 号 p. 97-103

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抄録
心エコーは,非侵襲的な検査法であり,心臓の形態的,機能的診断が可能である。当科では,65 歳以上の高齢者に対して全身麻酔の術前検査として心エコー検査を実施し,循環器内科医の診察を受けている。そこで,高齢者に対する本検査の結果,有効性について検討した。対象は,最近 3 年間(2009〜2011 年)に当科で術前に心エコー検査を行い,全身麻酔下に歯科口腔外科手術を行った 65 歳以上の高齢者 102 名 115 例とした。異常所見が全くなかった症例が 31 例(27%)であった。弁硬化や軽度逆流などは認められたものの有意な所見ではなかった症例が 44 例(38%)であった。有意な異常所見を認めた症例が 40 例(35%)であった。異常所見の内訳は,弁狭窄,弁閉鎖不全,心室壁運動異常などであった。有意な異常所見を認めた 40 例のうち,検査前の問診などから,心エコー検査で何らかの異常があると事前に予測できた症例は 10 例のみであった。循環器疾患の既往歴が全くなかった症例が 40 例のうち,10 例含まれていた。また,心電図で全く異常所見のなかった症例は 40 例中,10 例含まれていた。このうち 1 例は,疣贅の存在が疑われたため,予定手術を延期して精査を行った。心エコー検査は,問診や心電図検査だけでは認識できない心疾患をスクリーニングできることから,高齢者の術前検査として有用かつ必須と思われた。
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© 2012 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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