老年歯科医学
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調査報告
介護老人福祉施設における口腔ケアの実態
―インプラント治療が施されている入居者への対応および口腔ケアの問題点の抽出―
萩原 芳幸森野 智子関 みつ子澤田 久仁彦
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2012 年 27 巻 2 号 p. 104-113

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抄録

本調査の目的は介護老人福祉施設において,1)介護職員が口腔ケアにおいて直面する問題点等を明らかにする,2)現在口腔内にインプラントが存在している要介護者と口腔ケアの状況や問題点を明らかにすることである。今回,静岡市内の介護老人福祉施設のうち 20 施設を無作為に抽出し,アンケート用紙を郵送した。アンケートの質問事項は,1)口腔ケアに関する一般的事項,2)インプラントに関して,3)固定性補綴装置に関してとした。アンケート回収率は 45%で,2施設からはインプラントが口腔内に存在する入居者ありとの回答を得たが,詳しい情報は把握ができていなかった。介護老人福祉施設では要介護度の高い入居者が多く,一般的な口腔ケアに対する理解度や取り組みはある程度行われていた。しかし,インプラント(固定性補綴装置を含む)に関しては,1)口腔ケア等に関して十分な知識がない,2)入所前の歯科情報が少なくインプラントの有無が分からないなど,今後解決すべき問題が提起された。今回のアンケート結果より以下の事項が示唆された。1)インプラントの有無も含み,入所前の歯科情報を介護する側がもつことは口腔ケアに関して有効である。2)インプラントおよび固定性補綴装置の基礎知識と,口腔ケアの方法などを歯科医療従事者から介護者に対して恒久的に発信・教育する必要がある。3)介護施設の専任介護職員に歯科衛生士(歯科のエキスパート)がいることが望ましい。

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© 2012 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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