老年歯科医学
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27 巻, 2 号
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総説
原著
  • ―第1報:サルコペニア予防プログラム介入前調査として―
    岡田 和隆, 柏崎 晴彦, 古名 丈人, 松下 貴惠, 山田 弘子, 兼平 孝, 更田 恵理子, 中澤 誠多朗, 村田 あゆみ, 井上 農夫 ...
    2012 年 27 巻 2 号 p. 61-68
    発行日: 2012/10/15
    公開日: 2012/10/19
    ジャーナル フリー
    サルコペニア(筋肉減少症)は 80 歳以上の高齢者の約半数にみられる加齢変化であり,顎口腔領域にも現れるといわれている。本研究ではサルコペニア予防プログラムに参加した自立高齢者を対象とし,介入前調査として栄養状態と口腔内状態および口腔機能との関連を明らかにすることを目的とした。自立高齢者 62 名(69〜92 歳,男性 27 名,女性 35 名)を対象者とした。口腔内状況と口腔機能に関する聞き取り調査は事前に質問票を配布して行い,口腔内診査と口腔機能評価は歯科医師が行った。聞き取り調査質問項目,口腔内診査項目,口腔機能評価項目と血清アルブミン値(Alb)との関連を検討した。Alb は 4.3±0.3 g/dl であり,対象者の栄養状態は良好であった。口腔機能に関する2つの質問項目,主観的口腔健康観,下顎義歯使用の有無において Alb に有意差が認められた。残根を除く現在歯数,現在歯による咬合支持数およびオーラルディアドコキネシス(ODK)の/ka/の音節交互反復運動において,Alb と有意な関連が認められたが弱い相関関係であった。義歯満足度,口腔清掃状態,上顎義歯使用の有無,口唇閉鎖力,RSST,ODK の/pa/および/ta/,口腔粘膜保湿度,唾液湿潤度では関連は認められなかった。自立高齢者では現在歯数,咬合支持,義歯の使用の有無,口腔の健康や機能に対する自己評価が良好な栄養状態と関連する可能性が示唆された。
  • ―アンケート調査からの考察―
    玉澤 佳純, 玉澤 かほる, 岩松 正明, 山口 哲史
    2012 年 27 巻 2 号 p. 69-76
    発行日: 2012/10/15
    公開日: 2012/10/19
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,高齢者の歯科治療の最適時間帯を探ることにある。東北大学歯学部附属病院を受診した 65 歳以上の患者 100 名(高齢者群)と,20 歳代の患者 100 名(若年者群)を対象として,歯科治療を希望する時間帯,治療時間の長さ,身体的要因(体調の良否,全身疾患,服用薬),社会的要因(交通機関,通院の所要時間)等のアンケート調査を行い,歯科治療の最適時間帯を検討した。その結果,高齢者群では,歯科治療の希望時間帯は 10 時〜11 時が最も多く(42%),次いで 11 時〜12 時(18%),9 時〜10 時(13%)の順で,午前中を希望する人が約 73%を占めた。また,起床直後,および昼食後から夕方にかけて,体調不良を訴える人が 56%いた。さらに,昼寝をする人が23%いた。治療時間の長さは,30 分〜1 時間が最も多く(56%),次いで 30 分以内(20 %),1 時間〜1 時間 30 分(15%)の順であった。一方,若年者群では,歯科治療の希望時間帯は 9 時〜21 時まで広く分布しており,高齢者群と違いがみられた。また,若年者群でも体調不良を訴える人が 21%おり,多くが起床直後(14%)であった。しかし,昼寝をする人は1名(1%)であった。さらに,治療時間の長さは,高齢者群より短い傾向にあった。以上より,高齢者は体調が安定している午前中に歯科治療を希望する傾向が認められ,高齢者の歯科治療には,バイオリズムを反映した最適時間帯が存在する可能性が示唆された。
  • 牧平 清超, 峯 裕一, 首藤 崇裕, 寺田 善博, 二川 浩樹
    2012 年 27 巻 2 号 p. 77-86
    発行日: 2012/10/15
    公開日: 2012/10/19
    ジャーナル フリー
    顎堤の骨吸収は,機械的刺激による骨造成と骨吸収の不均衡が一つの原因と考えられる。近年,荷重や張力などの機械的刺激による骨芽細胞や破骨細胞への分子レベルでの影響を検討することが可能となってきた。そこで本研究では,機械的刺激による破骨細胞の分子レベルでの変化を明らかにすることを目的に,周期性伸展刺激がMC3T3-E1 細胞および RAW264.7 細胞に与える影響について検討した。可溶性 RANKL は RAW264.7 細胞における TRAP および cathepsin K mRNA の発現を,コントロールと比較して有意に促進した(ANOVA,p<0.01)。一方,伸展率5% の周期性機械刺激は,可溶性 RANKL による TRAP と cathepsin K mRNA の発現増強を有意に抑制した(p<0.05)。この伸展率 5% の周期性機械刺激による TRAP mRNA の発現抑制は,イオノマイシン存在下ではみられなかった。一方,同条件である伸展率 5% の周期性機械刺激は,MC3T3-E1 細胞の Osterix および ALPase mRNA の発現を有意に抑制した(p<0.05)。反対に RANKL および OPG mRNA の発現を有意に促進した(p<0.05)。以上の結果より本条件の機械的刺激は,骨芽細胞と破骨細胞の分化を抑制する可能性が示唆された。
  • ―病棟の特性および臨床経験年数別の比較―
    横塚 あゆ子, 隅田 好美, 日山 邦枝, 福島 正義
    2012 年 27 巻 2 号 p. 87-96
    発行日: 2012/10/15
    公開日: 2012/10/19
    ジャーナル フリー
    要介護高齢者の誤嚥性肺炎の予防として口腔ケアが有効であることが明らかにされて以来,病院の看護業務においても口腔ケアの重要性が認識されるようになった。病棟看護師による日常的口腔ケアと,歯科専門職による専門的口腔ケアの両者の効果的な実施方法を検討するための基礎資料を収集することを目的とし,病棟看護師にアンケート調査を行った。新潟県内の歯科口腔外科を有する 4 カ所の医療機関に勤務する病棟看護師 644 名を対象に,入院患者の口腔ケアに対する意識,関心,実施状況および実施にあたっての問題点を調査し,所属病棟別および臨床経験年数別による分析を行った。その結果,ほとんどの看護師が口腔ケアの重要性を認識していた。しかし,口腔ケアの現状は不十分で,今以上に口腔ケアを行う必要があると考えていた。急性期病棟では口腔ケアの実施回数と理想回数が一致していたが,慢性期病棟では一致していなかった。病棟での口腔ケア用具としてスポンジブラシはかなり普及していたが,歯間清掃用具はほとんど使用されていなかった。また,臨床経験年数の長い看護師ほど口腔ケアの重要性を認識しており,臨床経験年数によって口腔ケアを学習した機会に違いがみられた。口腔ケアについて学習したい内容は「口腔内の状態が悪い患者の口腔ケア」「全身状態が悪い患者の口腔ケア」で,学校教育や生涯研修だけでは習得が難しい口腔ケアの知識や技術があげられていた。これらの結果から,病棟看護師と歯科専門職が互いの専門性を生かした連携方法を検討することが今後の課題であると考えられた。
臨床報告
  • 北川 栄二
    2012 年 27 巻 2 号 p. 97-103
    発行日: 2012/10/15
    公開日: 2012/10/19
    ジャーナル フリー
    心エコーは,非侵襲的な検査法であり,心臓の形態的,機能的診断が可能である。当科では,65 歳以上の高齢者に対して全身麻酔の術前検査として心エコー検査を実施し,循環器内科医の診察を受けている。そこで,高齢者に対する本検査の結果,有効性について検討した。対象は,最近 3 年間(2009〜2011 年)に当科で術前に心エコー検査を行い,全身麻酔下に歯科口腔外科手術を行った 65 歳以上の高齢者 102 名 115 例とした。異常所見が全くなかった症例が 31 例(27%)であった。弁硬化や軽度逆流などは認められたものの有意な所見ではなかった症例が 44 例(38%)であった。有意な異常所見を認めた症例が 40 例(35%)であった。異常所見の内訳は,弁狭窄,弁閉鎖不全,心室壁運動異常などであった。有意な異常所見を認めた 40 例のうち,検査前の問診などから,心エコー検査で何らかの異常があると事前に予測できた症例は 10 例のみであった。循環器疾患の既往歴が全くなかった症例が 40 例のうち,10 例含まれていた。また,心電図で全く異常所見のなかった症例は 40 例中,10 例含まれていた。このうち 1 例は,疣贅の存在が疑われたため,予定手術を延期して精査を行った。心エコー検査は,問診や心電図検査だけでは認識できない心疾患をスクリーニングできることから,高齢者の術前検査として有用かつ必須と思われた。
調査報告
  • ―インプラント治療が施されている入居者への対応および口腔ケアの問題点の抽出―
    萩原 芳幸, 森野 智子, 関 みつ子, 澤田 久仁彦
    2012 年 27 巻 2 号 p. 104-113
    発行日: 2012/10/15
    公開日: 2012/10/19
    ジャーナル フリー
    本調査の目的は介護老人福祉施設において,1)介護職員が口腔ケアにおいて直面する問題点等を明らかにする,2)現在口腔内にインプラントが存在している要介護者と口腔ケアの状況や問題点を明らかにすることである。今回,静岡市内の介護老人福祉施設のうち 20 施設を無作為に抽出し,アンケート用紙を郵送した。アンケートの質問事項は,1)口腔ケアに関する一般的事項,2)インプラントに関して,3)固定性補綴装置に関してとした。アンケート回収率は 45%で,2施設からはインプラントが口腔内に存在する入居者ありとの回答を得たが,詳しい情報は把握ができていなかった。介護老人福祉施設では要介護度の高い入居者が多く,一般的な口腔ケアに対する理解度や取り組みはある程度行われていた。しかし,インプラント(固定性補綴装置を含む)に関しては,1)口腔ケア等に関して十分な知識がない,2)入所前の歯科情報が少なくインプラントの有無が分からないなど,今後解決すべき問題が提起された。今回のアンケート結果より以下の事項が示唆された。1)インプラントの有無も含み,入所前の歯科情報を介護する側がもつことは口腔ケアに関して有効である。2)インプラントおよび固定性補綴装置の基礎知識と,口腔ケアの方法などを歯科医療従事者から介護者に対して恒久的に発信・教育する必要がある。3)介護施設の専任介護職員に歯科衛生士(歯科のエキスパート)がいることが望ましい。
  • 伊藤 奏, 相田 潤, 若栗 真太郎, 野口 有紀, 小坂 健
    2012 年 27 巻 2 号 p. 114-120
    発行日: 2012/10/15
    公開日: 2012/10/19
    ジャーナル フリー
    本研究は,要介護高齢者と歯科を結びつける重要な役割を果たす居宅介護支援事業所に注目し,居宅介護支援事業所と歯科との連携の現状を調査し,連携の有無に関連している要因を検討することを目的とした。居宅介護支援事業所を無作為に 2,820 カ所選定し,自己記入式の調査票を用い,郵送法で調査を行った。調査期間は 2010年1月〜2 月とした。全国 858 事業所から回答が得られた(回収率 30.4%)。約 60%の居宅介護支援事業所が歯科と連携していた。居宅介護支援事業所の歯科との連携の有無を目的変数,居宅介護支援事業所ごとの職員数,都道府県別の高齢化率,都道府県別人口 1 万人あたりの歯科医院数を説明変数,および地域ブロックを調整因子として行った多変量ロジスティック回帰分析より,職員数が 2 名以下の事業所に比べ,3 名ではオッズ比が1.49(95% CI:1.04〜2.11),4 名以上ではオッズ比が 2.58(95% CI:1.80〜3.68)と,職員数が多いほど,歯科との連携ありの割合が大きくなる傾向があった。都道府県の高齢化率が最も低い群に比べ,中位の群で,オッズ比が 0.48(95% CI:0.28〜0.75)と,歯科との連携の割合が少ない傾向がみられた。本研究により,高齢化率の高い都道府県にある事業所ほど,歯科との連携が少なく,職員数が多い事業所ほど歯科との連携が多いことが示唆された。
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