抄録
2007 年以降,厚生労働省と東京都は歯科訪問診療と医療連携を推進するための施策を実施してきた。これらの施策が,歯科訪問診療と医療連携に与えた影響を評価した研究はまだない。われわれは,2006 年と 2011 年に東京都と東京都歯科医師会が行った調査を比較分析した。その結果,2011 年の歯科訪問診療実施者の割合は 2006 年より少なく,2006 年に比べ主治医と連携している割合も少ないことが認められた。国や東京都の施策が,まだ成果を上げていないことが明らかとなった。また,歯科訪問診療の未実施理由は「特に要請がない」が最も多く,2006 年よりも多かったことから,歯科訪問診療を必要とする患者と歯科医師とが繋がらないことに問題があることが示唆された。一方,歯科訪問診療の実績を上げている歯科医師の年齢は高く,歯科訪問診療を実施している歯科医師は関連情報の収集や研修受講の意欲が高い傾向にあった。また,自院に通院していた患者が,在宅医療を受けるようになったために歯科訪問診療が始まったことが最も多く 2006 年よりも増加したことと,訪問診療先の患者宅も前回より増加したことは,今後の歯科訪問診療の方向を示唆するものであると思われた。