抄録
本研究は,要介護高齢者に対して定期的な専門家による歯肉縁上プラークコントロールを2年間継続した場合の歯面清掃状態および,歯周組織に及ぼす影響を明らかにすることを目的として遂行された。東京都台東区の特別養護老人ホーム入居者 88 名(平均年齢 81.8±9.1 歳)を対象とした。転居や死亡により 39 名を除外した。研究開始時(BL)から,15 名の入居者には,日常のブラッシング(入居者自身,あるいはヘルパーによる)に加え,歯科衛生士による週に一度の歯肉縁上プラークコントロールが行われた(介入群)。他の 34 名には入居者自身またはヘルパーによるブラッシングが行われた(対照群)。BL と2年後に,プロービング・ポケット・デプス(PPD),臨床的アタッチメント・レベル(CAL),プロービング時の出血(BOP),プラーク指数(PlI)の記録を行った。平均 PlI は介入群においては2年間で 0.3±0.4 減少し,対照群では0.1±0.8 増加し,両群間に統計学的有意差がみられた(p<0.05)。平均 PPD,平均CAL および平均 BOP に関しては両群間で統計学的有意差がみられなかった。また,介入群においては 199 歯中 17 歯(8.5%)喪失し,対照群においては 311 歯中 36 歯(11.6%)が喪失した。この結果から歯科衛生士によるシステム化された専門的口腔ケアにより,介護老人福祉施設入居者の歯面清掃状態が改善されることが証明された。今後は厳密な口腔衛生プログラムを導入した大規模な研究が必要である。