抄録
エナメル上皮腫は一般に若年者に発生することが多く,高齢者において発生することは比較的まれとされている。今回,われわれは高齢者の下顎大臼歯部に発生したエナメル上皮腫を2例経験したので,その概要を報告する。 症例 1:79 歳,女性。2009年3月下顎左側第二大臼歯部の膨隆の精査目的で来院した。顎嚢胞を疑い経過観察を行っていたが,増大傾向を示したため、2010年3月開窓術および組織検査を行った。その結果エナメル上皮腫と診断された。その後病変の縮小を待って,2011年10月切除術を行った。症例 2:79 歳,女性。2011年7月,下顎右側第一大臼歯部頰側歯肉の腫瘤の精査目的で来院した。組織検査を行い歯原性腫瘍と診断された。2011年8月切除術を行った。病理組織学検査より周辺性エナメル上皮腫と診断された。 高齢者のエナメル上皮腫は比較的少ないが散見され,診断においては常にエナメル上皮腫を含めた歯原性腫瘍も念頭におく必要がある。そして,根治性を求めながらも術後のQOLの確保など,患者自身の背景についてよく考慮した治療方針が必要になる。