老年歯科医学
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27 巻, 4 号
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総説
原著
  • 吉田 康一, 小澤 総喜, 角 保徳
    2013 年27 巻4 号 p. 356-365
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/04/22
    ジャーナル フリー
    超高齢社会の到来とともに,義歯の使用者は年々増加し,QOL の観点から,義歯の重要性は増している。有床義歯上に使用される義歯用陶歯は,良好な審美性と高い硬度から広く用いられているが,製品ごとの使用成分と焼成方法によっては,陶材内部に気泡や亀裂が発生し,口腔内装着後に破折の原因となるため,品質管理が重要である。既存の義歯用陶歯内部の評価方法は抽出検査および破壊検査なので得られる情報量が限られている。今回,光干渉断層診断装置(Optical Coherence Tomography;OCT)の非破壊検査,高解像度,同時性などの特徴を用いて,義歯用陶歯の内部構造を評価することを試みた。 国立長寿医療研究センターにて産官共同開発された歯科用 OCT 画像診断機器(IVS-2000, Santec)を用い,4社 13 種の市販義歯用前歯部陶歯を撮影し,得られたOCT 画像上で義歯用陶歯の内部構造とクラックや気泡などの欠陥について非破壊的な評価を行った。義歯用陶歯は使用している珪酸質セラミックの組成が製品種で異なっているが,OCT 画像診断によって光透過性の高いエナメル質部と低い象牙質部(コア部)が確認され,天然歯様に再現していることが判明した。OCT 画像上で義歯用陶歯内部に微細な気泡による空隙も確認できた。歯科用 OCT 画像診断機器を用いることで,試料破壊が必要であった義歯用陶歯の内部評価を非破壊的に行うことが可能であり,JIS の検査事項の内,熱衝撃試験と気泡の確認試験をある程度代替することが可能と考えられた。本研究の結果,歯科用 OCT 画像診断機器を用いることで,リアルタイムに義歯用陶歯の欠陥や内部構造の脆弱な部位を客観的に評価・検出することが可能であると確認された。
  • 上田 貴之, 須藤 るり, 渡邉 幸子, 田嶋 さやか, 竜 正大, 田坂 彰規, 大神 浩一郎, 櫻井 薫
    2013 年27 巻4 号 p. 366-372
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/04/22
    ジャーナル フリー
    口腔ケア用ジェルを併用した舌清掃の効果を検討することを目的に,2週間の舌清掃前後の舌苔付着量,水分量,舌表面の総嫌気性菌数およびカンジダ菌数の比較と検討を行った。対象は,口腔ケアの介助が必要な高齢者21名(平均年齢88±9歳)とした。被験者をランダムに2群に分けた。コントロール群では舌ブラシによる舌清掃を,ジェル併用群ではヒノキチオール配合口腔ケア用ジェル(リフレケアH,イーエヌ大塚製薬)を舌に塗布し,30秒経過後に舌ブラシによる舌清掃を行った。舌清掃は,口腔ケアごとに行った。評価方法は,舌苔付着程度,舌前方中央部の水分量,舌表面中央部の総嫌気性菌数およびカンジダ菌数の4項目とした。介入期間は2週間とした。各評価項目の比較には,介入前を対象としたDunnett検定を用いた。ケア開始前の各計測項目では,2群間に有意差は認められなかった。コントロール群では,すべての計測項目で介入前後に有意差は認められなかった。一方,ジェル併用群では,介入前後で総嫌気性菌数に有意差は認められなかったものの,舌苔付着程度,水分量およびカンジダ菌数では有意差を認めた。以上の結果より,舌ブラシのみの清掃では十分な舌苔除去効果を得ることはできなかった。しかしながら,ヒノキチオール配合口腔ケア用ジェルと舌ブラシを用いた2週間の舌清掃によって,要介護高齢者の舌苔の付着量が減少することが明らかになった。
臨床報告
  • 玉澤 佳純, 玉澤 かほる, 岩松 正明
    2013 年27 巻4 号 p. 373-384
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/04/22
    ジャーナル フリー
    この研究の目的は,脊柱彎曲症患者に対応できる新しいデンタルチェアーを開発することにある。最初に65歳以上の高齢者50人とコントロールとしての20歳代の若年者30人を対象として,身体計測を行った。計測には,座位で着衣のまま計測できる自家製の背面形状計測装置を使用した。得られた頭部を含む背面形状から,脊柱および首の彎曲を計測した。脊柱の最突出部の頂点から,首の最深部および腰の彎曲の変曲点に引いた線でできる角度を,脊柱の彎曲を示す角度θとして求めた。さらに,首の彎曲の計測には,首の最深部を基準にして頭および肩に対する接線を引き,両方の接線でできる角度を角度αとして求めた。また,頭の位置を,脊柱の最突出部を基準として,垂直面からの水平距離として計測した。その結果,角度θおよび角度αともに,高齢者においては若年者より小さく,統計学的に有意の差(t-test, p<0.01)がみられた。また,頭の位置は,高齢者では,若年者に比較して有意(t-test, p<0.01)に前方にあることが判明した。これらの結果は,チェアーの背板が 1 枚ではなく,2 枚あるいはそれ以上が必要なことを示唆していた。 そこで,これらの計測結果をもとにデンタルチェアーの背板と安頭台を開発した。背板はメインの背板とサブ背板の 2 枚からなり,サブ背板がメイン背板の中に組み込まれた形状にした。サブ背板はメイン背板から独立して上下,前後移動ができるが,初期状態ではメイン背板の中にサブ背板が収まっている。このサブ背板の上下移動およびリクライニング機構により,脊柱彎曲症患者の背中の彎曲にフィットできる。しかも,サブ背板はメイン背板と一緒に連動して,上下移動およびリクライニングもできる機構にした。安頭台はサブ背板と連動して可動できるようにした。
  • 後藤 達明, 高久 勇一朗, 井出 愛周, 長束 智晴, 市川 雄二
    2013 年27 巻4 号 p. 385-391
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/04/22
    ジャーナル フリー
    エナメル上皮腫は一般に若年者に発生することが多く,高齢者において発生することは比較的まれとされている。今回,われわれは高齢者の下顎大臼歯部に発生したエナメル上皮腫を2例経験したので,その概要を報告する。 症例 1:79 歳,女性。2009年3月下顎左側第二大臼歯部の膨隆の精査目的で来院した。顎嚢胞を疑い経過観察を行っていたが,増大傾向を示したため、2010年3月開窓術および組織検査を行った。その結果エナメル上皮腫と診断された。その後病変の縮小を待って,2011年10月切除術を行った。症例 2:79 歳,女性。2011年7月,下顎右側第一大臼歯部頰側歯肉の腫瘤の精査目的で来院した。組織検査を行い歯原性腫瘍と診断された。2011年8月切除術を行った。病理組織学検査より周辺性エナメル上皮腫と診断された。 高齢者のエナメル上皮腫は比較的少ないが散見され,診断においては常にエナメル上皮腫を含めた歯原性腫瘍も念頭におく必要がある。そして,根治性を求めながらも術後のQOLの確保など,患者自身の背景についてよく考慮した治療方針が必要になる。
  • ―顎欠損部を補塡する形態を付与する試み―
    横山 薫, 原田 由香, 山川 道代, 古屋 七重, 山下 まどか, 湯浅 研, 野末 真司, 高橋 浩二
    2013 年27 巻4 号 p. 392-399
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/04/22
    ジャーナル フリー
    舌接触補助床(Palatal Augmentation Prosthesis:PAP)は,舌の実質欠損や舌運動障害をもつ患者に対し,嚥下・構音機能を補助するために適用される装置である。 その効果については従来から多くの報告があるが,硬組織である下顎区域切除後症例に対する PAP の効果については明らかではない。 今回われわれは,放射線性骨壊死で下顎区域切除後に舌の運動障害と口唇閉鎖不全を生じ,嚥下・構音機能障害を来たした症例(56 歳,男性)に対し,顎欠損部の補塡と口唇閉鎖のための形態を付与した PAP を適用して良好な結果を得たので報告をする。 発語明瞭度検査,会話明瞭度検査にて構音機能を評価したところ,どちらも PAP 装着により改善が認められた。また,舌の口蓋への接触様式についてスタティックパラトグラムにて評価したところ,PAP 非装着時に認められた舌口蓋接触様式の異常が PAP 装着により正常な接触様式に近づいた。また,舌突出嚥下も PAP 装着により正常な嚥下様式となった。 嚥下機能については嚥下造影検査,舌圧測定により評価した。その結果,PAP 装着により誤嚥は消失し,嚥下後の口腔残留・嚥下回数の減少,口腔通過時間および咽頭通過時間の短縮,ならびに舌圧の上昇が確認された。 以上の結果から,PAP に顎欠損部の補塡と口唇閉鎖のための形態を付与することで,舌尖部のアンカー機能と側方部の舌圧産生機能が改善したと考えられ,嚥下・発音機能の双方において硬組織欠損症例に対する本装置の有用性が示された。
  • 黒木 唯文, 田中 利佳, 村田 比呂司
    2013 年27 巻4 号 p. 400-404
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/04/22
    ジャーナル フリー
    患者は初診時 67 歳の女性で,義歯装着時の左側臼歯部の違和感を主訴にかかりつけ医にて義歯調整を受けるも改善せず,かかりつけ医より長崎大学病院口腔外科を紹介され受診した。当院口腔外科にてビスフォスフォネート系薬剤関連顎骨壊死(以下BRONJ)と診断され,薬物療法および腐骨除去術を受け,粘膜の治癒に至った。患者より義歯の新製作の希望があったことで当科を受診した。当科初診時,左側臼歯部相当顎堤は吸収が顕著で,粘膜は菲薄化していた。旧義歯の調整を行いながら,通法に従い,上下顎義歯を製作した。新義歯装着後も下顎顎堤部に義歯性潰瘍を生じないよう注意深く調整を行ったが,BRONJ 初発部位に義歯性潰瘍を発症した。そこで使用義歯にて粘膜調整を行い,使用義歯を用いたダイナミック印象採得後,間接法にて粘膜面に軟質リライン材を適応した結果,良好な経過を得た。 通常,義歯性潰瘍に対する処置としては,義歯の適合精度の向上やリリーフ処置,また咬合調整などで対応する。しかしながら,本症例のような従来の調整法で対応不可能な症例に対して,軟質リライン材の適応で改善できたことは,本材の緩圧効果が強く影響したものと考えられる。 軟質リライン材は,義歯床下粘膜に対する緩圧効果が期待できる材料であり,本材をリラインした義歯は,BRONJ の既往患者に有用な治療法であることが示唆された。
調査報告
  • 片山 正昭, 中島 丘, 長坂 浩, 渡辺 真人, 吉岡 亜希子, 薮内 貴章, 鶴重 良太, 浅野 倉栄, 三宅 一徳, 山本 真樹, 岡 ...
    2013 年27 巻4 号 p. 405-413
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/04/22
    ジャーナル フリー
    藤沢市歯科医師会が開設する高齢者歯科医療を含む二次歯科診療担当者 30 名(受講者),指導にあたったインストラクター 17 名を対象に,救命処置講習に係る意識の相違,受講者の講習会評価を検討した。 両者間で,必要とする救命処置の程度(一次・二次救命処置)について,有意な相違は認められなかった(p=0.28)。一次救命講習を受講すべき頻度は,受講者では,「半年に1回5 名(16.7%)」,「年に1回17名(56.7%)」を合わせても 22 名(73.4%)であったが,インストラクターは「半年に 1 回が 14 名(82.4%)」と高く,意識の相違が有意に認められた(p<0.01)。 一次救命講習前の事前学習会の必要の有無について,「必要」との回答は,受講者が 6 名(20.0%)であったが,インストラクターは 15 名(88.2%)と高く,有意な相違が認められた(p<0.01)。 受講者の講習会全般の総合評価(満足度)は,評価の高い順に,評価 5:19 名(63.3 %),評価 4:3 名(10.0%),評価 3:6 名(20.0%),評価 2,評価 1:0 名(0%)であった。自由記載では,定期的,継続的な開催を望む記載が散見された。 以上から,一次救命講習を受講すべき頻度や講習前の事前学習会の必要の有無について,受講者とインストラクターとの意識の相違が有意に認められ,受講者の救命処置講習への取り組みや意識などは十分ではなかった。
教育ノート
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