老年歯科医学
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調査報告
ダウン症候群の老化および退行と歯科受診における変化(第一報)
髙野 知子小松 知子宮城 敦石井 裕美池田 正一
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2013 年 28 巻 1 号 p. 27-33

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抄録
ダウン症候群(Downʼs syndrome:DS)は一般に,早期より老化現象が現われることが知られ,それにともない生活適応水準が急激に低下する退行現象が問題となっており,歯科診療時にも少なからず影響を及ぼしていると考えられる。今回われわれは,20 歳以上の DS 患者 24 名(20 歳代 4 名,30 歳代 14 名,40 歳代 6 名)を対象に,その保護者に対して「ダウン症候群の老化度・退行度チェックリスト」および日常生活,ならびに歯科受診状況に関するアンケートを行った。また,その担当歯科医師らに対し,歯科受診時の態度やブラッシング時の動作,口腔衛生状態の変化についてのアンケートを行い,患者の老化・退行と歯科受診における変化を比較検討したところ次のような結果が得られた。 1.「ダウン症候群の老化度・退行度チェックリスト」の結果,加齢にともない老化度・退行度も増していた。 2.老化・退行にともない,歯科への通院が以前と比較して困難となったり,ユニットへの長時間の着座が困難となった DS 患者が認められた。 3.老化・退行と口腔衛生状態の悪化に関係は認められなかった。 4.歯科医療従事者は,DS 患者の歯科受診時の態度や,こだわり行動に着目し,老化・退行を見きわめ,歯科への通院を途切れさせることなく継続させ,口腔衛生管理の維持,口腔衛生状態の向上ができるように努めなければならない。
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© 2013 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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