抄録
地域高齢者における,かかりつけ歯科医の有無と要介護認定との関連を受診行動との関連とあわせ,前向きコホート研究により検討した。 70 歳以上の地域高齢者 834 人(平均 75 歳,女性:52%)に対し口腔診査および質問紙調査を含む心身の総合機能評価を実施し,その後の要介護認定を追跡した。質問紙調査では,かかりつけ歯科医の有無,歯科受診動機,最終受診の時期について質問した。 解析には年齢,性別,BMI,疾患既往,喫煙,飲酒,学歴,栄養状態,認知機能,抑うつ傾向,身体機能,ソーシャルサポート,現在歯数を補正した Cox 比例ハザード分析を用いた。 ベースライン調査時,全体の 86%(778 人)がかかりつけ歯科医を有していた。平均 6.2 年の追跡で要介護認定は 37%(304 人)に認められ,かかりつけ歯科医がない群の累積発生率は有意に上昇した(p<0.01)。Cox 比例ハザード分析において,かかりつけ歯科医なしは要介護認定と独立した関連を有した(ハザード比:1.4,95%信頼区間:1.0〜1.9)。一方,受診動機および最終受診の時期は,いずれも要介護認定との関連を認めなかった。 かかりつけ歯科医の有無は,疾患既往,心身機能,社会的要因,生活習慣,口腔状態と独立して要介護認定と関連しており,かかりつけ歯科医が介護予防に貢献していることが示唆された。