超高齢社会を迎えた日本では,高齢者の誤嚥性肺炎が増え問題となっている。その誤嚥性肺炎を防止するためにも,口腔嚥下機能の低下に合わせた高齢者用食品が必要であり,現在は誤嚥を防止する目的で液状食品や飲料に適度なとろみを付与する増粘剤が広く利用されている。しかし,これまでの研究では増粘剤に関する物性解析がまだ十分に進んでいないのが現状である。そこで本研究では,嚥下食調理時に使用される増粘剤の濃度,添加する味,温度がテクスチャーと離水率に与える影響について検討を行った。 濃度別試料は,増粘剤の量を調整することで変化させ,味別試料は,甘味・塩味・酸味を溶媒に加えて作製した。これらの各試料を,5℃/25℃/37℃に調整した後,それぞれテクスチャー解析し,硬さ・凝集性・付着性を求めた。離水率は,試料表面にろ紙を置き離水を吸い取り,ろ紙の重量を測定することにより求めた。 物性評価の結果,濃度や温度の変化に関わらず,硬さ・凝集性・付着性のほぼすべてが嚥下食ピラミッドの開始食を示し,本研究における増粘剤は濃度および温度によって物性が大きく変化しないことが示唆された。しかし,味の添加による物性評価から,増粘剤に酸味や塩味を添加すると,まとまりにくくなる可能性があると考えられた。離水率測定の結果,酸味の試料の離水率が大きく,酸味を添加することにより食品のテクスチャーは変化しやすくなると示唆された。