老年歯科医学
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原著
注水切削時における誤嚥防止のための口腔内吸引法の検討
山田 素子臼田 頌森下 仁史潮田 高志
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2015 年 29 巻 3 号 p. 282-287

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抄録

寝たきり老人では,長期にわたり口腔内の歯科治療管理が行われないことが多く,補綴物や歯の鋭縁等による口腔内の疼痛,出血,潰瘍が生じることがある。その場合,早急に補綴物等の除去,削合等により原因の除去を行う必要があるが,全身状態が悪く嚥下障害を伴っている症例では,注水下での切削により注水液誤嚥のリスクが発生する。そこで,口腔内の吸引を 2 系統にした場合の吸引効果に関して検討したところ,有意な結果が得られたので報告する。 正常嚥下が可能な健常成人 26 歳〜57 歳の男女 10 名からなる被験者を水平位とし,貯留唾液を嚥下させた後,下顎左側第一大臼歯咬合面上で注水下にタービンを 1 分間空回転させた。同一の被験者で 4 方法の手技で口腔内の吸引を行い,口腔内に貯留した液を計量,比較検討した。手技 1;吸引の 1 系統として左側第一大臼歯の頰側に吸引管(通称バキュームチップ)を配置。手技 2-1;1 系統目の吸引に加え,舌側のタービン近くに 2 系統目の吸引管を配置。手技 2-2;2 系統目の吸引管をタービンより約 5mm離し舌側に配置。手技 2-3;2 系統目の吸引管を舌根部脇に配置。 手技 2-1・2-2・2-3の口腔内の平均貯留液量は手技 1 に比べ有意(p<0.01)に低い値を示した。このことにより,注水切削時の吸引を 2 系統使用する方法は,注水液の咽頭への流入を防止する効果が高いことが判明した。

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© 2015 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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