老年歯科医学
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臨床報告
無症候性心筋梗塞を発症した脳血管障害後遺症患者の1症例
山添 淳一平塚 正雄二宮 静香左 真奈美高倉 李香北川 順三氷室 秀高名城 嗣麿山川 宏美竹島 勇谷口 省吾
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2015 年 29 巻 3 号 p. 296-301

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抄録
虚血性心疾患は一般的に胸痛を伴うが,自覚症状が現れない場合があり,無症候性心筋虚血と分類される。また,虚血性心疾患は既往歴の有無が発生リスクに大きく影響する。心疾患の既往がない脳血管障害後遺症患者で,気管支肺炎加療目的の入院中に無症候性心筋梗塞を発症した症例を経験したので報告する。 患者:86 歳,女性。来院時の血圧:132/89 mmHg,SpO2:89%,体温:38.4℃,CRP:23.61 mg/dl。口腔乾燥は著明で嚥下反射惹起性は低下しており,また食事の経口摂取は困難であった。 誤嚥性肺炎が疑われて入院となり,入院加療後,肺炎症状は改善したが,経鼻経管栄養が14日間継続され,口腔機能の廃用が進んだ。主治医の依頼を受け,摂食機能療法,口腔ケア,義歯の調整を行うこととなった。入院 18 日目,午前中に摂食機能療法,義歯調整を行ったが,気分不良等の症状はなかった。しかし,同日の夕方に胸痛等の症状の訴えはなかったが,心電図の波形変化から心筋梗塞を発症していることが判明した。 循環器専門医の診察により梗塞発生後 5 日以上経過した亜急性前壁梗塞と診断された。 その後,無症状のまま,心不全や不整脈が現れることなく経過した。歯科診療を行う際には心拍,血圧,心電図,SpO2の監視下とした。 無症候性心筋梗塞のリスクを入院時から認識して義歯調整,摂食嚥下機能訓練を行うべきであった。多職種と連携して全身状態を総合的に判断するとともに,モニタリング機器を活用して歯科診療を行う必要があると考えられた。
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© 2015 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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