抄録
超高齢社会を迎えた今,患者のQOL向上のためには質の高い義歯診療を効率的に提供できることが重要である。義歯調整では,担当医が処置をしている時間に患者はユニット上での待ち時間(空白時間)が生じてしまう場合が多い。総義歯調整時の診療内容および診療時間の調査をすること,そして,その診療に対する担当医・患者・アシスタントの意識調査を行うことにより,質の高い診療を効率的に行うにはどのようにすれば良いかを明らかにすることを目的とした。 対象者は,上下顎総義歯患者31名,担当医14名とアシスタント12名である。まず,診療手順をビデオで記録し,診療後に各対象者に意識調査を行った。記録したビデオから診療内容と対応する時間を算出した。また,空白時間と意識調査の回答の関係は,SPSS統計ソフトを用いてt検定で評価した。 平均診療時間は28.0分であった。診療時間中の空白時間は,担当医が4%,患者が47%,アシスタントが45%であった。患者とアシスタントは診療に対する評価点が高く,空白時間と診療時間や評価点との関連が認められなかった。しかし担当医は,患者とアシスタントの空白時間を認識し,空白時間が長いほど診療に対する評価点が低くなる傾向がみられた。 担当医とアシスタントが患者とアシスタントの空白時間を認識し,有効活用することで,より効率的で質の高い診療を行える可能性が示唆された。