老年歯科医学
Online ISSN : 1884-7323
Print ISSN : 0914-3866
ISSN-L : 0914-3866
30 巻, 1 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
ガイドライン
  • ―学会の立場表明 2015―
    枝広 あや子, 渡邊 裕, 平野 浩彦, 古屋 純一, 中島 純子, 田村 文誉, 北川 昇, 堀 一浩, 原 哲也, 吉川 峰加, 西 恭 ...
    2015 年 30 巻 1 号 p. 3-11
    発行日: 2015/07/10
    公開日: 2016/12/02
    ジャーナル フリー

     本文は,増加する認知症患者の背景と現状を鑑み,認知症患者に対する歯科口腔保健・歯科医療のあり方に関して整理を行い,現時点での日本老年歯科医学会の立場を表すものである。

     日本老年歯科医学会は,高齢化が進むわが国で,高齢者歯科医療のあり方について積極的に取り組んできた。しかし,認知症患者に対する歯科口腔保健・歯科医療に対する取り組みは十分とはいえない。

     近年,地域包括ケアがわが国の施策の中で重要なミッションの一つになっており,その中で“QOLの維持・向上”に対して歯科が大きな役割を果たす必要がある。そのためには,原因疾患や神経心理学的症状を理解し,病態の進行を的確に予測した継続的な支援計画と歯科治療計画を検討し,柔軟な対応を行うことが必要である。

     本文で指摘した認知症発症と口腔との関係,認知症初期段階での早期発見への関わりの整備,歯科医療の意思決定プロセスの整備,歯科治療・口腔機能の管理などの指針の作成を科学的根拠のもとに進め,他の医療,介護・福祉関係者だけでなく,国民に十分な理解を得て,認知症患者の歯科的対応と歯科治療を充実させ,認知症患者のQOLの維持と尊厳保持を進めていくことが日本老年歯科医学会の使命と考える。そのために,日本老年歯科医学会は,日本老年学会,歯科関連学会と協働し,学際的および多職種と連携して認知症の諸問題の解決に取り組み,正しく必要な情報を社会に発信していく決意をここに示す。

原著
  • 一色 ゆかり, 佐藤 裕二, 北川 昇, 七田 俊晴, 川田 大助, 石川 万里子
    2015 年 30 巻 1 号 p. 12-24
    発行日: 2015/07/10
    公開日: 2015/07/14
    ジャーナル フリー
    超高齢社会を迎えた今,患者のQOL向上のためには質の高い義歯診療を効率的に提供できることが重要である。義歯調整では,担当医が処置をしている時間に患者はユニット上での待ち時間(空白時間)が生じてしまう場合が多い。総義歯調整時の診療内容および診療時間の調査をすること,そして,その診療に対する担当医・患者・アシスタントの意識調査を行うことにより,質の高い診療を効率的に行うにはどのようにすれば良いかを明らかにすることを目的とした。 対象者は,上下顎総義歯患者31名,担当医14名とアシスタント12名である。まず,診療手順をビデオで記録し,診療後に各対象者に意識調査を行った。記録したビデオから診療内容と対応する時間を算出した。また,空白時間と意識調査の回答の関係は,SPSS統計ソフトを用いてt検定で評価した。 平均診療時間は28.0分であった。診療時間中の空白時間は,担当医が4%,患者が47%,アシスタントが45%であった。患者とアシスタントは診療に対する評価点が高く,空白時間と診療時間や評価点との関連が認められなかった。しかし担当医は,患者とアシスタントの空白時間を認識し,空白時間が長いほど診療に対する評価点が低くなる傾向がみられた。 担当医とアシスタントが患者とアシスタントの空白時間を認識し,有効活用することで,より効率的で質の高い診療を行える可能性が示唆された。
  • 角田 拓哉, 佐藤 裕二, 北川 昇, 中津 百江, 青柳 佳奈, 高山 真里, 椿田 健介
    2015 年 30 巻 1 号 p. 25-36
    発行日: 2015/07/10
    公開日: 2015/07/14
    ジャーナル フリー
    全部床義歯治療において維持力の評価は重要であるが,客観的指標はなく主観的評価で行われている。過去の研究では,維持力測定に大がかりな装置を用いていた。本研究では開発した維持力測定装置を用い,簡便な維持力測定方法の確立を目的とした。 被験者は30名の上顎無歯顎者とした。牽引測定は66中心窩を結んだ線と正中線の交点(C),後縁正中(P),6中心窩(MF)とした。加圧測定は11切縁の正中 (IE),4頰側咬頭(PC)とした。開発した装置を用いて各5回測定し,義歯離脱時の荷重量を維持力とした。ただし,被験者が測定中に痛みを訴えた場合等は測定を中止し,2回連続で中止した部位は測定不能とした。統計学的分析は三元配置分散分析,Tukey の多重比較と Pearson の相関分析を用いた。C,MF は約半数で測定不能で,P,IE,PC は全被検者で測定可能であった。P,IE 間に有意差はなく,PCはPとIEに比べ有意に大きかった(p<0.01)。PとIE間(r= 0.640),PとPC間(r=0.452)ともに有意な正の相関が認められた。 過去の文献からも P は維持力測定に適した部位ではあるが,チェアサイドにて簡便に測定することは不可能である。IEはPと強い相関を示すことから,シーネが不要で測定可能な IE の加圧測定の方が,簡便に維持力の客観的評価を行うには適していることが示唆された。
  • 石川 正夫, 武井 典子, 石井 孝典, 高田 康二, 濵田 三作男
    2015 年 30 巻 1 号 p. 37-45
    発行日: 2015/07/10
    公開日: 2015/07/14
    ジャーナル フリー
    超高齢社会が進展するなか,介護を必要としないことおよび認知症の予防が急務な課題となっている。そこで,われわれは高齢者の介護予防を目指した口腔機能の評価と管理システムを開発し,ケアハウス入所者において口腔機能の向上に役立つことを確認した。 今回は,本システムが認知機能の低下抑制に役立つか否かを明らかにする目的で,グループホームにて調査を行った。対象者は鹿児島県のグループホーム入所者(「GH-A」)および神奈川県のグループホーム入所者(「GH-B」)である。初回,6カ月後,1年後の検査に参加した GH-A12名および GH-B24名を対象に,口腔機能および認知機能の評価(MMSE)を行った。初回の口腔機能検査(①口腔周囲筋,②咀嚼機能, ③嚥下機能,④口腔清潔度)結果に基づいて,個々人に対応した口腔機能向上プログラムを本人および介護スタッフに提案・実施を依頼した。実施状況は,GH-Aは毎日,GH-Bは半分程度であった。 その結果,②咀嚼機能が 1 年後にGH-Aで改善した。③嚥下機能の指標であるRSST,オーラルディアドコキネシス「pa音」の回数が6カ月後に GH-Aで有意に増加した。さらに,MMSE得点は,GH-Bで1年後に有意に低下したが,GH-Aでは変化はみられなかった。以上の結果より,プログラム実施状況の影響はあるものの,本システムの介入により口腔機能の維持・向上を通して認知機能の低下抑制に貢献できる可能性が示唆された。
feedback
Top