抄録
歯科衛生士の職域が拡大しつつある現在,歯科衛生士を配置している施設と配置していない施設において,口腔ケアに関する施設職員の認識および口腔ケアの実施状況を調査し,高齢者施設における歯科衛生士の有用性について検討した。 対象は,高齢者施設 2 施設(A 施設:歯科衛生士配置なし,B 施設:歯科衛生士配置あり)に勤務する職員 96 名である。方法は,自記式質問紙による調査を実施し,口腔ケアの認識および口腔ケアの実施内容について Key Word を抽出し,質的に分析した。 さらに,口腔ケアの実施状況について歯科衛生士の配置の有無で比較検討を行った。 調査の有効回答数は,49 名(51%)であり,歯科衛生士などを除外した 47 名(49 %)を分析した。口腔ケアの認識について抽出された Key Word は両施設とも清潔保持,感染予防,誤嚥予防,肺炎予防,口腔機能に関するものなどが挙げられたが,B 施設では,会話,美味しく食べる,表情などの QOL に関連した Key Word もみられた。 さらに,口腔ケアの実施状況について比較した結果,口腔マッサージ,口腔および嚥下体操について B 施設が有意に高かった(p<0.05)。 以上の結果から,歯科衛生士が配置されている B 施設は A 施設に比べ,QOL の向上を目標とし,清潔保持や感染予防を目的とした口腔ケアに加えて,口腔機能の維持向上を重視した包括的口腔ケアをより高い割合で実施している傾向がみられた。したがって,高齢者施設における歯科衛生士の有用性が示唆された。