老年歯科医学
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原著
ブローイング時の水溶液の粘性度とストローが口輪筋とオトガイ下筋群に及ぼす影響
中澤 悠里渋谷 友美髙橋 一也磯貝 知一小正 裕
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2016 年 31 巻 3 号 p. 337-345

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抄録

 ブローイング法は鼻咽腔閉鎖機能不全の患者において,鼻咽腔閉鎖にかかわる神経・筋群の機能改善を目的として使用される。著者らはブローイング時に軟口蓋を挙上する筋以外にもストローを保持・固定する口輪筋およびオトガイ下筋群に負荷がかかると考え,ブローイング時の条件を変化させることでそれらの筋群の強化も可能であると考えた。そこで,使用するストローおよび水溶液の条件の差異が,ブローイング時に使用される口輪筋およびオトガイ下筋群の筋活動量に及ぼす影響について明らかにすることを目的とし,詳細に検討を行った。

 対象は健常成人10名とした(平均年齢27.6±2.4歳)。測定時の姿勢は90°座位とした。ストローの長径は20 cmとし,幅径は6,10,15 mmの計3種類を用いた。被験試料である水溶液は,水100 mlに増粘剤(つるりんこQuickly,クリニコ,東京)を溶解させ,粘性度0,2,4,6%の計4種類を作製した。水溶液を満たした容器にストローを挿入し,合図とともに被験試料を可能なかぎり長く泡立つように吹かせた。ストローの幅径および水溶液の粘性度のすべての組み合わせにおいて両筋の筋活動量を比較した。

 口輪筋では水溶液の粘性度の上昇とともに,筋活動量の増加が有意に認められた。オトガイ下筋群においては,どの幅径においても粘性度による筋活動量の差異は認められなかった。各ストローの幅径における口輪筋とオトガイ下筋群の筋活動量において,口輪筋およびオトガイ下筋群ともに,すべての粘性度において有意な差は認められなかった。

 以上のことから,水溶液の粘性度の調整を行うことで,口輪筋への負荷の調整が可能であることが示唆された。

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© 2016 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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